工事進行基準

2009年4月 7日 (火)

内部統制の次は工事進行基準だ?

先日公表された「金融庁から内部統制報告制度に関するQ&A」の再追加分で、内部統制関連の新しい公表物は概ね終了と考えられます。これで、導入初年度の内部統制対応のゴールが見えてきたという方々も多いのではないでしょうか。
しかし、既に平成21年度は始まっています。これまで、内部統制対応に追われて工事進行基準への対策が遅れ気味のソフトウェア業の方々向けに、4月13日にソフト・リサーチ・センター主催で工事進行基準の導入セミナーを開催いたします(毎度、ご案内が遅れて申し訳ありません)。

http://www.src-j.com/seminar/detail_s.asp?p_SemCode=29-233&p_BackURL=index.html

実務導入の検討過程で、生じてきたご疑問にお答えしていきたいと思いますので、決算を向かえご多忙の時期ですが、多くの方々のご参加をお待ちしております。

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2009年2月 6日 (金)

工事進行基準における外注費の扱い

2009年度から「工事契約に関する会計基準」が導入されます。
対象業種の中でもソフトウェア業の方々は、多くの疑問にぶつかっているのではないでしょうか。
実務上、特に問題になるのは期末時点における外注費の計上方法です。この点について、日経SYSTEM誌 最新号(2009年2月号)の特集記事に、各社の事例が紹介されていますので、参考になると思います。
(ちなみに、当方も、今回の特集のお手伝いをしたため、本文中に登場しております。)

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2009年1月20日 (火)

中小ソフトウェア業務進行基準に?

2009年1月16日付けで、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の関係4団体から「中小企業の会計に関する指針」改正の公開草案が公表されました。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/111p_a_2.html

 今回の改正では、「工事契約に関する会計基準」に対応した見直しが行われており、具体的には、第73項「収益認識」において、以下の記載に変更されています。

工事契約(受注制作のソフトウェアを含む。)
工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用する。
成果の確実性が認められるためには、次の各要素について、信頼性をもって見積もることができなければならない。
(1) 工事収益総額
(2) 工事原価総額
(3) 決算日における工事進捗度

これは、「工事契約に関する会計基準」第9項と同一の表現になっています(「見積る」の送り仮名が「見積もる」になっている点だけ、違いますが)。

この「中小企業の会計に関する指針」は、法的に強制されるものではありませんが、近年では、銀行からの借入れ時に、同指針適用のチェックリストの提出を求められるケースが増えていますので中小ソフトウェア業の方々も注意が必要でしょう。
なお、公開草案への、コメント締め切りは2月6日です。

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2008年12月22日 (月)

工事進行基準関連基本通達の改正

2008年12月16日付けで法人税基本通達の改正が行なわれており、「10 経過的取扱い」の中に工事進行基準に関連する通達が含まれています。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/080702/10.htm#k03

【新設】(経過的取扱い(3)…長期大規模工事以外の工事の取扱い)
 平成20年4月1日前に開始した事業年度において着手した平成20年改正法による改正前の法(以下経過的取扱い(3)において「旧法」という。)第64条第2項《長期大規模工事以外の工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定(一部略)によりその収益の額及び費用の額の計上につき工事進行基準の方法を適用している長期大規模工事以外の工事(一部略)については、この法令解釈通達による改正前の2-4-19の取扱いは、なお従前の例による。

法人税法における工事進行基準関連の扱いは、平成20年度から適用されているのですが、経過措置によって、平成21年度分から適用することも選択できます。経過措置を適用する場合には、従来の法人税基本通達が適用される旨が示されています。
なお、法人税法で規定している経過措置工事は、個々の工事契約を指すのではなく、「平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間に開始する事業年度に着手する工期1年以上2年未満かつ請負対価10億円以上50億円未満である工事について、そのうちいずれか一の工事でも工事進行基準の方法による経理をしていない場合におけるその事業年度に着手したすべての工事」を意味する点にご注意ください。

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2008年12月10日 (水)

法人税法における工事進行基準 その6

法人税法では長期大規模工事(契約金額10億円以上かつ工期が1年以上)について、工事進行基準を強制適用することを求めていますが、長期大規模工事から除くことを認める例外規定が存在します。再度、法人税法施行令第129条に戻ります。

法人税法施行令 第129条
第2項
 
法第64条第1項 に規定する政令で定める要件は、当該工事に係る契約において、その請負の対価の額の二分の一以上が当該工事の目的物の引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないものであることとする。

第6項
内国法人の請負をした長期大規模工事であつて、当該事業年度終了の時において、その着手の日から6月を経過していないもの又はその第三項に規定する進行割合が100分の20に満たないものに係る法第64条第1項 の規定の適用については、第3項の規定にかかわらず、当該事業年度の当該長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額は、ないものとすることができる。ただし、当該長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、その確定した決算において同項に規定する工事進行基準の方法により経理した事業年度以後の事業年度については、この限りでない。

まず、第2項において、対価の1/2以上が、引渡し後1年以降に支払われる場合には資金負担等を考慮して進行基準の対象から外されます。
さらに、第6項においては、
  期末時点で着手から6ヶ月を経過していないもの
  期末時点で進捗度が20%未満のもの

は進行基準の適用対象外とすることが許容されています。
このような、税法上の考え方は、「工事契約に係る会計基準」の自社における適用基準を検討する際に参考になるでしょう。

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2008年12月 9日 (火)

法人税法における工事進行基準 その5

法人税法における工事進行基準の具体的な計算方法については、法人税法施行令第129条第3項に定められています。

法人税法施行令 第129条
第3項 

法第64条第1項 及び第二2項 に規定する政令で定める工事進行基準の方法は、工事の請負の対価の額及びその工事原価の額(当該事業年度終了の時(一部略)の現況によりその工事につき見積もられる工事の原価の額をいう。以下この項において同じ。)に当該事業年度終了の時におけるその工事に係る進行割合(工事原価の額のうちにその工事のために既に要した原材料費、労務費その他の経費の額の合計額の占める割合その他の工事の進行の度合を示すものとして合理的と認められるものに基づいて計算した割合をいう。)を乗じて計算した金額から、それぞれ当該事業年度前の各事業年度の収益の額とされた金額及び費用の額とされた金額を控除した金額を当該事業年度の収益の額及び費用の額とする方法とする。

いわゆる原価比例法による進捗度の見積方法を例示していますが、「その他の工事の進行の度合を示すものとして合理的と認められるもの」という記載がありますので、合理的な方法ならば、原価比例法以外の方法も許容されています。

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2008年12月 8日 (月)

法人税法における工事進行基準 その4

他の話題をはさんでしまいましたが、2008年11月27日のブログの続きで、法人税法における工事進行基準の扱いについてご説明していきます。
前回、法人税法上は長期大規模工事について進行基準が強制適用されることをご説明しました。したがって、長期大規模工事とはどのようなものかが問題になります。
法人税法における長期大規模工事とは、以下のようなものです。

製造及びソフトウエアの開発を含む工事契約で
契約金額が10億円以上 かつ 工期が1年以上のもの

その詳細については政令(法人税法施行令)に委ねられています。具体的な対象条文となる法人税施行令第129条は、法人税法における工事進行基準を理解するにあたって重要な条文ですので、ゆっくり確認していきましょう。

法人税法施行令 第129条 第1項 
 法第64条第1項 (工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)に規定する政令で定める大規模な工事は、その請負の
対価の額(その支払が外国通貨で行われるべきこととされている工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下この目において同じ。)については、その工事に係る契約の時における外国為替の売買相場による円換算額とする。)が10億円以上の工事とする。

ここで契約額10億円以上の契約が対象になることが定められています。また、その契約が外貨建であった場合には、契約時による為替相場を用いた換算額で判定する点についても注意してください。

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2008年11月27日 (木)

法人税法における工事進行基準 その3

先日の法人税法第64条第1項に続いて、第2項には、以下のような定めがあります。

法人税法第64条第2項
 内国法人が、工事(その着手の日の属する事業年度(以下この項において「着工事業年度」という。)中にその目的物の引渡しが行われないものに限るものとし、長期大規模工事に該当するものを除く。以下この条において同じ。)の請負をした場合において、その工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、着工事業年度からその工事の目的物の引渡しの日の属する事業年度の前事業年度までの各事業年度の確定した決算において政令で定める工事進行基準の方法により経理したときは、その経理した収益の額及び費用の額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入する。ただし、その工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、着工事業年度後のいずれかの事業年度の確定した決算において当該工事進行基準の方法により経理しなかつた場合には、その経理しなかつた決算に係る事業年度の翌事業年度以後の事業年度については、この限りでない。

この第2項だけ抜き出して読んでみても、よく意味がわからないと思います。

第1項とあわせ法人税法における工事進行基準の扱いをまとめると「長期大規模工事に該当する工事については進行基準を強制適用、それ以外の工事について進行基準を適用するかは会社の任意」ということです。
したがって、法人税法においては、「長期大規模工事」がどのようなものを意味するのかがポイントになります。

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2008年11月26日 (水)

法人税法における工事進行基準 その2

リース取引の話題で中断してしまいましたが、11月20日のブログからの続きで、法人税法における工事進行基準について説明していきしょう。
前回、法人税法においては、工事進行基準の適用について会計基準とは異なる「別段の定め」があると書きました。それは、法人税法第64条に定められています。まず、第1項から見ていきます。

法人税法第64条第1項
(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)

第64条  内国法人が、長期大規模工事(工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下この条において同じ。)のうち、その着手の日から当該工事に係る契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が1年以上であること、政令で定める大規模な工事であることその他政令で定める要件に該当するものをいう。以下この条において同じ。)の請負をしたときは、その着手の日の属する事業年度からその目的物の引渡しの日の属する事業年度の前事業年度までの各事業年度の所得の金額の計算上、その長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額のうち、当該各事業年度の収益の額及び費用の額として政令で定める工事進行基準の方法により計算した金額を、益金の額及び損金の額に算入する。

第1項をまとめると、長期大規模工事(ソフトウェアの開発を含む)については、工事進行基準によって収益認識することが強制されるということです。
会計基準においては、個々の請負工事について「成果の確実性」の有無を判断基準にして進行基準と完成基準を適用しますが、法人税法の世界においては「長期大規模工事」に該当した場合には進行基準を適用しなければならないのです。

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2008年11月20日 (木)

法人税法における工事進行基準 その1 

先日、連載が終了した日経新聞BizPlus「適用直前! 工事進行基準で経営はこう変わる」の第5回「もうひとつの工事進行基準」において、法人税法における工事進行基準の扱いについて解説しました。

セミナー等における質問をうかがっていても、この法人税法における工事進行基準の扱いについて混乱されている方が多いようですので、再度、整理しておきます。

まず最初に確認しておきたいのは、今回導入される「工事契約に関する会計基準」と法人税の関係です。法人税法第22条に以下の記述があります。

法人税法第22条(各事業年度の所得の金額の計算)
第2項 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
   (中略)
第4項 第2
項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

新しい「工事契約に関する会計基準」は、第4項でいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当しますので、法人税法上もこの基準にしたがって計算をすればよいのですが、その前に「別段の定めがあるものを除き」という限定があります。

法人税法上、工事契約にかかる工事進行基準については、この「別段の定め」が存在しますので、会計基準よりも法人税法特有の「別段の定め」が優先して適用されることになるのです。

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