軽減税率導入に関する今後の予想
本日、みずほセミナーで開催した消費税改正セミナーに、ご多忙のところ100名近くの方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。
8%改正が中心テーマだったため、今後の軽減税率導入について、十分な時間が割けませんでしたので、この場をお借りして補足しておきます。
本日も、与党の軽減税率制度調査委員会が開かれ、軽減税率対象品目などについて話し合いが行われました。http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131120/fnc13112013220008-n1.htm
軽減税率導入がどうなるかは政治判断に依りますが、現時点で明らかなことがひとつあります。それは、
軽減税率導入時のシステム対応の期間は最長で1年、最短で6カ月になる
という点です。
軽減税率の導入にあたって企業の負荷になるのは、軽減税率の対象が何になるかよりも、
・インボイス方式導入
・簡易課税制度の見直し
の2点です。
軽減税率の対象範囲がどのようになっても、それは業種ごとの話ですから対象外の業種には影響はありません。しかし、軽減税率導入にあわせてインボイス方式が導入された場合、その影響は日本のすべての事業者に及びます。
また、軽減税率が導入されると、現行の簡易課税制度も改正せざるを得ません。
その一方で、政治的には軽減税率の対象範囲決定が最大のトピックスになるため、上記、実務上の論点の決定は後回しにされることは明らかです。
軽減税率の導入が与党間で決定し、税制大綱に掲げられたとしても、平成26年の通常国会に提出される消費税改正法だけでは、実務対応はできません。
システムの修正に影響を与える関連政省令の改正が平成26年3月中に行われることは、ほぼ不可能であり、その決定は改正直前までズレ込んでいくでしょう。
昨日の 「セブンイレブンのレシートに税額がない本当の理由」 というエントリーでご紹介した、平成16年の総額表示導入時の経緯を参考事例としてご紹介しましょう。
平成16年4月1日から対消費者向け取引に総額表示が導入されたことは、皆さんもご記憶されているでしょう。
この総額表示の導入は平成14年末の税制大綱に記載され、平成15年初頭の通常国会で審議されました。つまり、導入から1年前の平成15年3月に法律は成立しています。
消費税額の端数処理については総額法と積上法があり、積上法はあくまでも特例であって、その特例適用の条件は消費税法施行規則第22条第1項に規定されていました。
これは、消費税法上は大変マイナーな論点ですが、システム開発上は重要な論点ですので、以前から当方の 著作 ではかなりのページをとって説明しており、SE向けの会計セミナーでも、常に解説していました。
平成15年の税制大綱で総額表示導入のニュースを知った時に、私が第一に考えたのは
「税抜ベースで規定されている消費税法施行規則第22条第1項はどうなるのか?」
ということです。。
なぜなら、それが決定しなければ総額表示にあわせたシステム対応はできませんし、私自身としてはセミナーで教えることができないからです。
そこで、とりあえず平成15年3月のセミナー時には「政省令は本法が国会通過後の3月末に改正されるのと思いますので、それまで詳細については待ってください」とアナウンスしていました。
そのような仕事の関係から毎日、官報をチェックしていたのですが、3月末の改正には端数処理についての言及がなく、そのまま5月を迎えました。
クライアントからの質問や、開催しているセミナーの関係もあって、困惑していたところ、平成15年5月19日付の税務通信に、以下のような記事が掲載されて、愕然としました。
「消費税総額表示の端数処理で波紋
(略)ちなみに財務省では、総額表示の導入に伴い同規則22条との整合性から改善しなければならない点があるか否かの検討を現在行っている。」
「えーっ!今から検討するんですかー! 」
結局、関係者との調整を終え消費税施行令が改正されたのは、総額表示導入の半年前の平成15年9月末でありました。
このような私的な思い出を長々とご説明した理由は、そもそも消費税というのは、このように混乱しながら進んでいくものだということを、システム関係の方々に知っていただきたいからです。
その歴史は、昭和62年の売上税の時代から始まっており、今後も変わることはないでしょう。
【ご案内】
消費税改正と会計システムへの影響を解説するセミナーを開催します。
受講ご希望の方は、下記のリンクからお申込みください。
「消費税改正の概要とシステム対応」 (主催 みずほセミナー)
(追加開催分)日時 2013年12月19日(大阪会場) 13:00~17:00
「消費税改正の概要とシステム対応」 (主催 みずほセミナー)
(追加開催分)日時 2014年2月12日(東京会場) 13:00~17:00
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント