改正消費税 個別対応方式と一括比例配分方式 その5(留意点)
個別対応方式及び一括比例配分方式を選択する際には、下記の消費税基本通達に注意してください。
消費税法基本通達
(個別対応方式の適用方法)
11―2―18
個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、その課税期間中において行った個々の課税仕入れ等について、必ず、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものとに区分しなければならない。したがって、例えば、課税仕入れ等の中から課税資産の譲渡等にのみ要するものを抽出し、それ以外のものをすべて課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものとして区分することは認められないのであるから留意する。
つまり、個別対応方式の適用にあたっては、個々の取引ごとに対応区分をつけることが予定されています。
各区分の具体的な内容については、以下のように規定されています。
消費税法基本通達
(課税資産の譲渡等にのみ要するものの意義)
11―2―12
法第30条第2項第1号((個別対応方式による仕入税額控除))に規定する課税資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」という。)とは、課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい、例えば、次に掲げるものの課税仕入れ等がこれに該当する。
なお、当該課税仕入れ等を行った課税期間において当該課税仕入れ等に対応する課税資産の譲渡等があったかどうかは問わないことに留意する。
(1) そのまま他に譲渡される課税資産
(2) 課税資産の製造用にのみ消費し、又は使用される原材料、容器、包紙、機械及び装置、工具、器具、備品等
(3) 課税資産に係る倉庫料、運送費、広告宣伝費、支払手数料又は支払加工賃等
消費税法基本通達
(課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものの意義)
11―2―15
法第30条第2項第1号((個別対応方式による仕入税額控除))に規定する課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」という。)とは、法第6条第1項((非課税))の規定により非課税となる資産の譲渡等(以下「非課税資産の譲渡等」という。)を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい、例えば、販売用の土地の造成に係る課税仕入れ、賃貸用住宅の建築に係る課税仕入れがこれに該当する。
消費税法基本通達
(不課税取引のために要する課税仕入れの取扱い)
11―2―16
法第30条第2項第1号((個別対応方式による仕入税額控除))に規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(以下「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」という。)とは、原則として課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等をいうのであるが、例えば、株券の発行に当たって印刷業者へ支払う印刷費、証券会社へ支払う引受手数料等のように資産の譲渡等に該当しない取引に要する課税仕入れ等は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものとして取り扱う。
上記、基本通達を読まれると、「共通」に該当する取引の範囲は、皆さんの想像よりも、かなり広いのではないでしょうか。
理論としては理解できても、実務上は、取引ごとに対応区分を決定するのが困難なケースも多く発生します。その際には、以下の通達を参考にしてください。
消費税法基本通達
(共通用の課税仕入れ等を合理的な基準により区分した場合)
11―2―19
課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当する課税仕入れ等であっても、例えば、原材料、包装材料、倉庫料、電力料等のように生産実績その他の合理的な基準により課税資産の譲渡等にのみ要するものとその他の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分することが可能なものについて当該合理的な基準により区分している場合には、当該区分したところにより個別対応方式を適用することとして差し支えない。
消費税法の仕入税額控除における「仕入」とは、日常用語としての「仕入」、つまり商品や原材料の仕入れだけではなく、交通費や消耗品費といった「経費」も含んだ概念です。
したがって、会計システムのモジュールで見た場合、ユーザー数が多い上に多様な勘定科目の取引を対象とする「経費管理」「旅費精算」といったシステムへの影響が大きくなります。
特に、一般ユーザーの使用を前提とした旅費精算システムでは、取引パターンを選択することによって、勘定科目や課税区分を自動仕訳するため、これらパターンの抜本的な見直しと、ユーザーへの教育が必要になる点も注意してください。
次回は、課税売上割合算出時の留意点について解説していきます。
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