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ブログ「会計意識」をご購読いただきありがとうございます。
2021年1月より https://www.iwatani-c.com/blog/ にブログを移転しました。
あわせて、事務所HP も刷新しております。
(WordPressのため読み込みに若干時間がかかりますが、ご勘弁)
今後は、こちらをご利用ください。
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【ブログ移転のご案内】
2021年に https://www.iwatani-c.com/blog/ にブログを移転しました。
当記事と同じ内容のものを こちら からお読みいただけます。
このたび、拙書『この一冊ですべてわかる 会計の基本』が、2010年の刊行から16度目の増刷となりました。
これも、ひとえに読者、書店並びに日本実業出版社の皆様のご協力のおかげです。この場をお借りして御礼申し上げます。
本書は会計の基本書でありますが、増刷のたびに最新制度にあわせた改訂を行っています。
また、各章末に設けたブックガイド欄も都度更新しており、今回は第4章「税務会計」の推薦図書として高下淳子先生の『「別表四と五」完全攻略本』を追加しました。
法人税申告書のポイントは別表四と五の作成にありますが、担当税理士によって様々な「クセ」があるため、唯一の正しい書き方というものがありません。
それが、初学者を混乱させる原因にもなっているのですが、高下先生の書籍では、多様な記載方法についてその意図も含めて解説しているため別表四と五の関係を整理するのに役立つ1冊になっています。
書店で見かけられたら、(拙書ともども)是非、お手に取ってご確認ください。
本日、2020年10月1日は何の日でしょうか?
そうです。消費税への軽減税率導入1周年の記念日です!
とお祝いするような人はだれもいないと思われる嫌われ者の軽減税率ですが、1周年を、記念して(?)昨日、国税庁から消費税Q&Aの改訂版が公表されました。
「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」(令和2年9月改訂)
「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」(令和2年9月改訂)
「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和2年9月改訂)
ただし、今回の改訂版で新たに追加されたQ&Aはなく、主に「これまで」といった表現を「令和元年9月30日まで」に変えるような語句の時制変更がほとんどです。
内容的に追加されたのは、適格請求書等保存方式に関するQ&Aにおける、次の2点です。
①適格請求書の交付義務が免除される卸売市場の定義の追加(問27)
問27 卸売市場を通じた生鮮食料品等の委託販売は、出荷者等の適格請求書の交付義務が免除されるそうですが、具体的には、どのような取引が対象となりますか。【令和2年9月改訂】
【答】 (一部略)
本特例の対象となる卸売市場とは、
① 農林水産大臣の認定を受けた中央卸売市場
② 都道府県知事の認定を受けた地方卸売市場
③ ①及び②に準ずる卸売市場として農林水産大臣が財務大臣と協議して定める基準を満た す卸売市場のうち農林水産大臣の確認を受けた卸売市場 とされています。(以降略)
②電子帳簿保存法の改訂に合わせた適用範囲の拡大(問54、67)
問54 当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供しています。
提供した電磁的記録については、保存しなければならないとのことですが、どのような方法で保存すればよいですか。【令和2年9月改訂】
【答】
(一部略)
また、その電磁的記録をそのまま保存しようとするときには、以下の措置を講じる必要があります(新消規26の8①)。
① 次のイからニのいずれかの措置を行うこと
(次のイとハが追加された:作者追記)
イ 適格請求書に係る電磁的記録を提供する前にタイムスタンプを付し、その電磁的記録を提供すること(電帳規8①一)
ハ 適格請求書に係る電磁的記録の記録事項について、次のいずれかの要件を満たす電子計算機処理システムを使用して適格請求書に係る電磁的記録の提供及びその電磁的記録を保存すること(電帳規8①三)
・ 訂正又は削除を行った場合には、その事実及び内容を確認することができること
・ 訂正又は削除することができないこと
(以降略)
【ご案内】
みずほセミナー で、新しい収益認識基準のセミナーを開催します。
2020年10月15日(木)13:00~17:00
収益認識会計基準の主要ポイント解説とシステム対応~導入・見直し
多くの方のご参加をお待ちしております。
本日から1週間後、令和2年10月1日以降に取得する居住用賃貸建物については消費税の仕入税額控除ができなくなります(消法35の2)。
(参考)消費税法改正のお知らせ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r02kaisei.pdf
これは、令和2年度の税制改正における「居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除制度の適正化」にともなうものです。
ここでいう「居住用賃貸建物」とは、以下の2つの要件を満たす資産です(消法30⑩)。
要件1 住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物以外
要件2 税抜き1千万円以上の物件(高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産)
2重否定が使われていてわかりづらい表現になっていますが、簡略化すれば、1,000万円以上の建物については仕入税額控除できない と考えていただいて結構です。
ただし、仕入税額控除が完全にできないわけではなく、3年以内(正確には購入日から第3年度の課税期間の末日まで)に
・住宅以外の用途で貸付した場合
・譲渡した場合
には、一定の調整計算を行って取得時の消費税額を仕入税額控除の対象にできます。
この改正は、金地金の売買を利用して課税売上割合を調整する租税回避行為への対抗策として導入されたのですが、経理担当者にとっては大変、厄介な制度です。
単純に仕入税額控除の対象外になるのではなく、購入後3年間は、物件ごとに個別に顛末を管理しなければ正確な消費税申告ができません。
したがって、会計システム上で「居住用賃貸建物」という新しい消費税区分を設けたとしても、システムで自動的に消費税計算を行うことは不可能です(別途Excelで管理するしかないでしょう)。
不動産業の方々は既に対応策をご検討されていると思いますが、通常、不動産を購入しない一般事業会社の方々で、不動産取引が生じた際に従来通りの処理を行わないようにご注意ください。
【ご案内】
みずほセミナーで、新しい収益認識基準のセミナーを開催します。
2020年10月15日(木)
収益認識会計基準の主要ポイント解説とシステム対応~導入・見直し
https://www.mizuhosemi.com/section/group/20-11036.html
東洋経済のサイト に、サイゼリアの堀埜一成社長へのインタビュー記事
「サイゼリア、社長も驚く「1円値上げ」の成果」
https://toyokeizai.net/articles/-/366926
が掲載されています。
「コロナ対応策の1つとして同社が打ち出したのが、これまで頑なに299円(税込み、以下同)を維持してきた看板商品「ミラノ風ドリア」を7月から300円へ1円値上げしたこと。全商品を50円単位の価格に設定したのだ。」
顧客に買い得感を与えるマーケティング手法として端数価格と呼ばれるものがあります。
商品の価格を桁上がりが起こる直前の端数に設定するもので、980円とか、4,980円といった値札は、皆さんもよく目にしているでしょう。
サイゼリアも、従来、この端数価格を用いていたのですが、コロナ対応でおつりのやり取りを減らすために端数価格を取りやめ50円単位の価格に設定し直しました。
この価格改定の成果として、コインの受け渡しや精算時間が減るだけではなく、客単価も上がったという話が紹介されています。
詳細についてはリンク先の記事をお読みいただきたいのですが、最後に次のような発言があります。
「他社にもおすすめしたいぐらいだ。ただ、当社はずっと税込みの価格表示にしてきたからすぐに改定できたが、税抜きの価格設定をしているところは、税込み価格を50円単位にそろえるのは難しいだろう。」
堀社長も指摘されているように、多くの小売業では、消費税分割高に見える税込価格表示ではなく税抜価格表示が選択されています。
また、複数税率制度(店内飲食は10%、テイクアウトは8%)に対応するために税抜価格表示にせざるを得なかった業態もあります。
今回のサイゼリアの事例は、今後の価格設定を考える際に参考になるものでしょう。
当該記事は下記の新しいサイトに移動しました。
https://www.iwatani-c.com/2020/07/22/dustbag/
コロナ対策のうち、第2次補正予算の目玉施策である家賃支援給付金制度の申請が本日7月14日から開始されました。
家賃支援給付金制度の概要については、こちらのパンフレットをご参照ください。
https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/pdf/yachin-kyufu.pdf
支給対象となる事業者はコロナ対策の第1弾として実施された持続化給付金に準じています。賃貸契約のうち、次のような契約は対象になりません。
1転貸(又貸し)を目的とした取引
2自己取引…賃貸人と賃借人が実質的に同一人物の取引
3親族間取引…賃貸人と賃借人が配偶者又は一親等以内の取引
特に、法人間取引では、2自己取引の範囲が問題になるのですが、7月7日に公表された申請要領では次のような説明に留まっていました。
賃貸人(かしぬし)が賃借人(かりぬし)の代表取締役である場合や、賃貸人(かしぬし)が賃借人(かりぬし)の議決権の過半数を有している場合など、会社法に規定する親会社等・子会社等の関係にある場合を指します。詳しくは給付規程をご覧ください。
実務上、多くある兄弟会社(同一の親会社を持つ子会社、いわゆるグループ会社)の取引が含まれるか否かが、この説明ではわからなかったのですが、申請開始とともに公表された給付規程(中小法人等向け)では次のように規定しています。
(基準額)
第5条 第3項
第1項の規定により基準額を算定する場合において、賃貸人その他の申請者に対して土地又は建物を使用及び収益させる義務を負う者(以下「賃貸人等」という。)と、申請者との関係が次の各号のいずれかである場合には、当該土地又は建物に係る賃料等は含めないこととする。
一 賃貸人等が、申請者の代表取締役又は申請者と同じ者を代表取締役とする会社であるもの
二 賃貸人等が申請者の親会社等(会社法(平成17年法律第86号)第2条第4号の2に規定する親会社等(自然人を含む。次号において同じ。)をいう。)又は子会社等(会社法第2条第3号の2に規定する子会社等をいう。)であるもの
三 賃貸人等が、申請者の代表取締役若しくは親会社等である自然人の配偶者若しくは一親等内の血族若しくは姻族又は当該配偶者若しくは一親等内の血族若しくは姻族を代表取締役若しくは親会社等とする法人であるもの
四 前各号に規定する関係に類するものその他給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと長官が判断するもの
現状の条文では、対象外となる関係者として兄弟会社について直接の言及はありませんが、第4号の「類するもの」に兄弟会社が含まれるか否かの判断が難しいため、コールセンターに確認してみました(申請初日に電話がつながった!素晴らしい!)。
コールセンターの回答によれば、第1号(代表取締役が同じ会社)または第3号(血族等の会社)に該当しなければ兄弟会社(グループ会社)間の契約も給付対象になる とのことでした。
ただし、申請初日でコールセンターも混乱しているようでしたので、順次更新される
FAQ(よくあるご質問)
審査におけるガイドライン
についても確認しながら申請するのがよいでしょう。
【ご案内】
先日、日本経営合理化協会で開催したコロナ対策向け緊急オンラインセミナーのダウンロード版も販売開始しておりますので、こちらもご利用ください。
決算書が苦手な社長のための「有事の資金繰り」
会計業界で働かれている方々は、3月決算のピークを越えたこれからの時期にPCの入れ替えを計画されるケースが多いのではないでしょうか。
私も先日、業務用のPCを最新機種に移行したのですが、eLTaxの移行で恐ろしい目(?)に遭いましたので、今後PC移行を検討されている方の参考になるようにまとめておきます。
PCdesk(DL版)の移行に注意
通常、地方税の電子申告(eL-TAX)は会計ベンダーの専用ソフトで行いますが、こちらの移行は簡単です。
一方、eL-TAX側でも無償のソフト(PCdesk)を提供しています。ベンダーソフトとPCdeskは対応範囲が異なるため、PCdeskも常にダウンロードしているのですが、こちらの移行に注意が必要です。
以前、当ブログでも取り上げましたがeLTAXは2019年10月から新システムが導入され、それにあわせてPC deskも新バージョンに更新されました。
旧バージョンのPCdeskを移行するには¥Program Files内の個別ファイルを探し出してコピーするというMS-DOS時代のような手続きが必要なため、 「PCdeskデータ移行マニュアル」にしたがって完全に正しい順序で行わなければ「確実に移行が失敗する」という代物でした。
同じ名称で異なる内容のマニュアルが存在する
さすがに、新バージョンはもっと簡便になっているだろうと思いながら、慎重を期して最新の「PCdesk データ移行マニュアル」を入手して作業に入ります。
「PCdeskデータ移行マニュアル 1.1版 2019年12月」
https://www.eltax.lta.go.jp/documents/01068
しかし、このマニュアルを読んでいると、どうも内容がおかしい。
あらためてマニュアル冒頭を読み直してみますと。
「本書は、旧PCdeskから新PCdeskへ移行する手順について説明したものです」
つまり、旧バージョンの移行マニュアルは「パソコン間の移行」に関するマニュアルだったのですが、新バージョンの移行マニュアルは旧バージョンから新バージョンへの「バージョンアップのマニュアル」に内容が変わっているのです。
これは、新バージョンと旧バージョンで開発ベンダーが変更された事による手違いだと思われますが、発注元(総務省)がしっかり管理してもらわないと混乱しますよね。
新バージョンにおける「パソコン間の移行」については、旧バージョンのように専用のマニュアルは用意されておらず、
「PCdesk(DL版)ガイド【申告、納税等】」
https://www.eltax.lta.go.jp/documents/00057
の中の「9 PCdeskのデータを移行する」(346ページ!)からの記述にしたがって行ってください。
また、eL-TAXのHPのトップに「PCdeskのバージョンアップ・データ移行」というリンクがありますが、こちらも「バージョンアップ方法」についての説明ですので「パソコンの移行」には関係ありません。
このリンク先に「 PCdeskの移行データ出力ツール」がダウンロードできるようになっていますが、このツールは旧バージョンから新バージョンへの移行時に使用するものです。
新バージョンについても利用できますが(PGMが流れてしまうのも怖い)、ファイル書き出し時のパスワード設定を間違えた場合には、移行ができないだけではなく、移行元のバージョンでも使用できなくなります(ヘルプデスクによるとインテグリティを確保するために、そのような仕様になっているとのこと)。
最後に繰り返しになりますが、PCdeskのパソコン移行の際には「PCdeskデータ移行マニュアル」ではなく、「PCdesk(DL版)ガイド【申告、納税等】」 の「9PCdeskのデータを移行する」をご参照ください。
【ご案内】
先日、日本経営合理化協会で開催したオンラインセミナーに参加できなかった方向けにダウンロード版の販売も開始されましたので、こちらもご利用ください。
決算書が苦手な社長のための「有事の資金繰り」
https://www.jmca.jp/prod/11599
2020年6月4日(木)、5日(金)に日本経営合理化協会の主催で開催される「社長オンラインアカデミー」に登壇します。
私は会計・経理業務の担当として下記のテーマについてお話します。
6月4日(木)11:30~12:40
決算書が苦手な社長のための「有事の資金繰り」
https://www.jmca.jp/semi/S2014h6
先週末に公表された第2次補正予算による追加施策を中心に、最新の情報を提供する予定ですので多くの方のご参加をお待ちしております。
なお、無料参加の申し込み は明日、6月2日(火)が締め切りになっていますのでご注意ください。
https://www.jmca.jp/semi/S201406
本日、新型コロナウイルスに対する持続化給付金の申請要領(速報版)が公表されました。
持続化給付金に関する申請要領 中小法人等事業者向け(速報版)
【2020年5月1日 追記】
本日から持続化給付金の申請が可能になりました。(補正予算成立の翌日!)
申請は下記サイトより
https://www.jizokuka-kyufu.jp/
持続化給付金に関する資料ダウンロードページ
https://www.jizokuka-kyufu.jp/subject/#subject_solo
給付対象の主な要件としては
1 新型コロナウイルスの影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している
2 中堅・中小法人(資本金10億円以上の大企業を除く)、個人事業者
3 2019年以前から事業による事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思がある事業者
給付額は次の式で算出します(ただし、法人200万円、個人事業者100万円が上限)。
給付額 =前年総売上-(50%減の月の売上×12)
今回、公表された申請要領では、創業初年度や合併法人などに適用される各種の特例が説明されています。
その中のひとつに「季節性収入特例」があります。これは、季節変動が大きい事業者について、通常の給付額計算では給付が受けられなかったり、不利な扱いになる事を避けるための特例です。
対象となるのは次の2つの要件を満たす場合です、
適用条件①
少なくとも2020年の任意の1か月を含む連続した3か月(対象期間)の事業収入の合計が、前年同期間の3ヶ月(以下「基準期間」という)の事業収入の合計と比べて50%以上減少していること。
適用条件②
基準期間の事業収入の合計が、基準期間の属する事業年度の年間事業収入の50%以上を占めること。ただし、基準期間が複数の事業年度にまたがる場合は、基準期間の終了月の属する事業年度の年間事業収入の50%以上を占めること。
※対象期間の終了月は2020年12月以前とする。
給付額は以下の算式で求めます。
給付額(上限200万円)=基準期間(3ヵ月間)の売上合計-対象期間(3ヵ月間)の売上合計
先ほどご紹介した申請要領にも事例が掲載されているのですが、ややわかりづらい事例でしたので単純な事例を作ってみました。
このように、特定月に売上が集中する場合には、前年同月比50%を下回る月だけを使った計算よりも、3ヵ月間の売上を用いる特例を使った方が有利になる場合があります。
なお、当給付金は令和2年度の補正予算案の成立が前提になっていますので、最終的な計算方法等は今月末ごろに公表される予定です。
【2020年5月1日 追記】
本日から持続化給付金の申請が可能になりました。(補正予算成立の翌日!)
申請は下記サイトより
https://www.jizokuka-kyufu.jp/
【2020年6月26日 追記】
6月29日から支給対象が拡大され、次の2形態が追加されました。
①主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者
②2020年1月~3月の間に創業した事業者
追加して提出する書類も増えていますので、下記パンフレット等をご参照ください。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin-kakudai.pdf
このたび、拙書『この一冊ですべてわかる 会計の基本』が、2010年の刊行から15度目の増刷となりました。
これも、ひとえに読者、書店並びに出版社の皆様のご協力のおかげです。この場をお借りして御礼申し上げます。
本書は会計の基本書でありますが、増刷のたびに会計制度にあわせた改訂を行っています。
また、各章末に設けたブックガイド欄も都度更新しており、今回は第7章「企業価値」の推薦図書として宮川壽夫先生の『企業価値の神秘』を追加しました。
現在、コロナウイルスへの緊急事態宣言により多くの書店が休業状態にあります。
本書が書店の棚に並ぶのも、もう少し先になろうかと思われますが、お見かけになられた際には、書店への応援も含め是非、ご購入下さい!
(書店の減少ペースは物凄い勢いで進んでおり、かつては、2万5千店あった新刊取扱店が、現在では1万店を切ったと言われています。今回の自粛は書店経営にも壊滅的な影響を与えています。酔っぱらった仕事帰りにふらっと書店に寄るという、あの貴重な時間が無くなるのは悲しすぎますよね。)
昨今、コロナウイルスの動向については、様々な人々が様々な立場から意見を述べられています。
このような、将来の不確実な事象への対応については、かつての「2000年問題」が参考になります。
(注:若い方のために、2000年問題について補足しておきます。西暦2000年をむかえる時に、従来下2桁で年号を管理していたシステムが予期せぬ障害を起こすのではないかと言われ、当時のIT担当者が世間からボコボコに叩かれながらも無事に対応したという悲劇の歴史です)
対応が完了した2000年3月30日に、政府(内閣コンピュータ西暦二千年問題対策室)が2000年問題を総括した報告書が公表されています。
「コンピュータ西暦2000年問題 に関する報告書」
私も、この2000年問題については、IT担当者として「間に合うのか!」「海外はこんなに進んでいるんだぞ!」と尻を叩かれましたので、この報告書中の内容には強い共感を覚えました。
報告書全体としては、内外からの批判等もあったが、我が国の2000年問題対応は大きな混乱も生じず的確なものであったと評価しています。
この中に、今後、参考とすべき事項として次のような記述があります。
Ⅳ.2000年問題から学ぶべきことと今後の対応
【今後の課題として更に対応すべきもの】
(中略)リスクがいかに低くてもゼロとは言えないために「可能性」があるという表現で断じてしまう等の用語の曖昧さも相まって、上記のような本来専門分野でない者による必要以上に深刻なコメントが影響力を持った。(太字は筆者加筆)
このような2000年問題の反省を踏まえた上で、本来専門家でない私が、本日は、少々コロナウイルスのネタを書かせていただきます(長いマクラだ)。
(Disclaimer)
当方、医療はまったく専門外ですので、以降は、単なるデータのご紹介とリンク集としてお読みください。
スェーデンのローカルニュースサイトで、次のような記事が掲載されています。
https://www.thelocal.se/20200310/timeline-how-the-coronavirus-has-developed-in-sweden
えらく長い記事なんですが、4月6日の記述の中で、下図のスウェーデンのインフルエンザ感染者数のグラフを参照し、感染者の推移(緑の棒グラフ)が急激に減少しているのは、衛生意識の変化を表していると紹介しています。
手洗いや三密を避けるといった行動は、コロナウイルスだけではなく、通常のカゼやインフルエンザ予防にも効くので、統計データが豊富で、かつ、発症までの時間の短いインフルエンザは、コロナウイルス感染の先行指数になるとの考えでしょう。
横軸は年初から第何週目かを示しているんですが、欧州では第8週(3月23日)にイタリアが移動制限を出していますので、そこからの行動変容が感染者数の減少に影響しているようです。
ただし、通常のインフルエンザは季節性であり、ピークの期間も短いので、これだけではよくわかりません。
次に、ヨーロッパ全体の状況を見てみましょう。ECDC(European Centre for Disease Prevention and Contro)がヨーロッパ全体の統計データを公表していまして、第13週における発生者を前年とを比較したグラフがありました。
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/weekly-influenza-update-week-13-march-2020
このグラフは前年の推移と比較しているのでわかりやすいですね。欧州で対策が行われ出した9,10週あたりから前年と比較して急激に減少していることがわかります。
続いて米国CDC(centers for Disease Contral and Prevention)が全米のインフルエンザの統計を発表しています。
https://www.cdc.gov/flu/weekly/index.htm
最新が第14週(最終4月4日)のレポートです。
急激に減少しているのはわかるのですが、このグラフだと過去との比較ができないので、州別のデータから、現在、深刻な状況なNY州の推移を見てみます。
https://www.health.ny.gov/diseases/communicable/influenza/surveillance/2019-2020/flu_report_current_week.pdf
こちらには、年度別のグラフがあります。
太い赤線が2020年です。3月ごろから減少はしているのですが、前述した欧州も米国も1,2月中には、例年にくらべて特段の行動変容は認められません。
続いて、コロナ対応に成功していると言われている韓国の事例をみてみましょう。
https://www.health.ny.gov/diseases/communicable/influenza/surveillance/2019-2020/flu_report_current_week.pdf
KCDCが、インフルエンザの週刊レポートを公表しており、これは、最新の第14週のグラフです。
これも赤線が2020年です。韓国は気候の特質なのか、インフルエンザのピークが年度によって大きく違うので、今年の推移だけ見て判断するのは困難です。大邱市の集団感染がわかったが2月中旬(第9週ごろ)なので、今年については、既にインフルエンザのピークを過ぎていたようです。
では、最後に我が国のデータを見てみましょう。
まず、NIID(国立感染症研究所)が過去10年の比較グラフを4月10日に公表しています。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/813-idsc/map/130-flu-10year.html
赤の太線が2020年度です。例年に比べて感染者数が大幅に少ない事がわかります。ただし、今年は例年になく温暖でしたので、気候の影響も大きいと推察されます。
最後にもうひとつ。東京都健康安全研究センターが公表している東京都のインフルエンザ状況のグラフをみてみます。
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/flu/2019/Vol22No17.pdf
これも赤い太線が2020年。このグラフをみると流行の始まりは例年よりも早かったのに、1,2月にピークをむかえないまま抑え込まれています(1月第1週の大きな減少は正月休みによる)。
急激に死者数が増加した欧州や米国とは異なる感染推移になっており、我が国においては既に1,2月から行動変異の影響が出ているとも読み取れます。
ただし、中国で最初の死者が出たのが1月9日、日本で最初の感染者が出たのが1月16日ですから、今年は、そもそもインフルエンザの流行が少なかったのか、コロナ対策による行動変容の結果なのかを判断するのは難しいところです。
繰り返しになりますが、当エントリーの主旨は、素人の私の意見を開陳することではなく、2000年問題で得た知見を役立てようというものですので、最後に再度、2000年問題報告書の一文を引用するとともに、現在も懸命に活動されている医療従事者の方々への感謝の言葉とさせていただきます。
(中略)上記のような深刻な影響を予測する者だけでなく、一般に、(ア)コンピュータにトラブルは付き物であり、(イ)それを前提に様々なシステムは構成されているという、コンピュータに接していれば、ある程度常識と理解できることが、こと2000年問題に限っては、この点を考慮せずに事態を深刻に捉えたり、誤作動に過敏に反応したりする傾向もあり、深刻な予想を受け入れる素地が形成されていたとみられる。
昨日、4月7日にコロナウイルスに対する緊急事態宣言が発令されました。
読者の皆様も各々の職場で対応に翻弄される日々を送られていると思います。
特に、飲食店の方々は、売上減に対応するために、テイクアウトメニューを増やしたり自主的な休業を始めているところも多く見かけます。
ここで、ひとつ飲食店の方々にお伝えしておきたい消費税の特例制度があります。
令和元年10月の軽減税率制度導入時に、複数税率による売上税額計算が困難な中小事業者向けに3種類の特例が設けられました。
詳細は下記の図をご参照ください。
この中で注目していただきたいのは、特例②の軽減売上割合を使って、1年間の標準税率と軽減税率の割合を決める方法です。
軽減売上割合とは
「通常の事業を行う連続する10営業日の課税資産の税込売上総額に占める軽減税率対象品分の割合」 です。
連続する10日間の軽減税率商品(8%)と標準税率商品(10%)の割合を集計し、その割合を1年間全体の売上に乗ずることで税額を計算することが認められているのです。
つまり、テイクアウト(軽減税率8%)の売上割合が高い10日間の軽減売上割合を用いることで消費税額の削減が可能になります。
なお、この特例の対象となるのは、売上を税率ごとに区分して合計するのが困難な中小事業者(基準期間における課税売上高が5千万円以下)に限定されている点に注意してください。
ここでいう「困難」の程度については、「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達」21に次のように規定されています。
(困難な事業があるときの意義)
21 改正法附則第38条第1項《31年軽減対象資産の譲渡等を行う中小事業者の課税標準の計算等に関する経過措置》に規定する「困難な事情があるとき」とは、例えば、事業者が同項に規定する適用対象期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、税率の異なるごとの管理が行えないことなどにより、当該適用対象期間中の当該課税資産の譲渡等の税込価額を税率の異なるごとに区分して合計することが困難である場合をいい、そのような場合には、その困難の度合いを問わず、同項に規定する経過措置を適用することができることに留意する。
(注)1 改正法附則第38条第2項に規定する「困難な事情があるとき」において同様である。
また、「通常の事業を行う連続する10営業日」の意義について、同取扱通達22に次のように規定されていますので、テイクアウトだけで営業するような「特別な営業」期間は計算対象から除かれる点に注意してください。
(通常の事業を行う連続する10営業日の意義)
22 改正法附則第38条第1項《31年軽減対象資産の譲渡等を行う中小事業者の課税標準の計算等に関する経過措置》を適用する場合の「通常の事業を行う連続する10営業日」は、同項に規定する適用対象期間における通常の事業を行う連続する10営業日であればいつかを問わないのであるが、例えば、通常飲食料品と飲食料品以外の資産の譲渡等を行う事業者が、特別な営業により、ある10日間について飲食料品の譲渡のみを行うといった営業日は同項に規定する「通常の事業」を行う営業日に含まれないことに留意する。
なお、これら「通常の事業」でない営業日を含む連続する10営業日に基づき同項の規定を適用することはできないのであるが、このような「通常の事業」でない営業日を除いた前後の連続する期間の合計10営業日については、「通常の事業を行う連続する10営業日」として取り扱う。
昨日3月31日付で企業会計基準委員会から企業会計基準第29号『収益認識に関する会計基準』の改正が公表されました。
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards/y2020/2020-0331-01.html
2018年3月に公表された「収益認識に関する会計基準」はIFRS15号に準じた内容ですが、開示と注記部分の詳細については新基準適用までの検討課題とされていました。
今回の改正により開示と注記部分の詳細が決定しました。
基本的には、昨年10月30日に公表された改正案と同様の内容になっています。
新型コロナウイルスの影響で確定申告の期限が1ヵ月、オリンピックも1年間延期されています。
収益認識基準の適用開始も1年程度延期してもらえないかと期待していたのですが、適用時期については当初通り
2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から
で変更はありません。
先日、3月27日に、平成2年度の税制改正法案が参議院を通過し成立しました。
基本的な改正内容は昨年末に公表された税制改正大綱通りですが、会計システムへの影響という点からみると、消費税法における居住用賃貸建物の扱いが気になる論点です。
今回の居住用賃貸建物に関する消費税改正の概要は次のようなものです。
(1)居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産(注)又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除制度を適用しない。(消費税法第30条関係)
(注)高額特定資産:棚卸資産又は調整対象固定資産で税抜価額が1千万円以上のもの
(2)上記(1)により仕入税額控除制度を適用しないこととされた仕入税額については仕入れの日から3年以内に住宅の貸付け以外の用に供した場合又は譲渡した場合には、一定の方法により計算した金額を仕入税額控除可能(消費税法第35条の2関係)
(3)上記改正は、令和2年10月1日以後の居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額について適用。(附則第44条関係)
会計システム上、この改正に対応するためには、新しく「居住用賃貸建物」用の消費税区分を設定すればよいのでしょうか?
今回の改正では、消費税区分を新しく設定しても問題の解決にはなりません。
物件購入時の消費税額を仕入税額から除くだけではなく、その後、販売等を行った課税期間に仕入税額控除の対象に加えなければならないからです。
会計システムの消費税区分は、取引の行われた会計期間(正確には課税期間)における消費税額を集計するためのものであり、翌期以降に個々の取引内容を繰越すような機能を持っていません。
さらに、仕入税額控除に加えるべき金額は、個別対応方式、一括比例配分方式等の違いによって異なる配分計算を行わなければいけません。
したがって、物件ごとの仕入税額とその顛末(=賃貸に使用しているのか販売したのか等)については別途Excel等を用いて管理しなければ納税額を計算できません。
通常の企業の場合、不動産取引は限定されるので対応可能と思われますが、不動産業においては相当の作業負荷が生じることは考慮しておくべきでしょう。
(税理士としても、正確に消費税額申告できるのか不安になるような改正です)
本日は、昨年末に発売された元サッカー日本代表監督 岡田武史氏による『岡田メソッド』 (英知出版)をご紹介します。
先日、地下鉄で隣に座った方が大きな本を読んでおりまして、内容が気になってのぞき見したのが本書でした。さっそく購入して読んでみたのですが、サッカーに興味のない方にもお勧めできる内容でしたので当ブログで取り上げる次第です。
岡田氏は、現在、サッカー監督の立場を離れ、今治FCのオーナーとして活動していますが、本書は、岡田氏が今までの経験から導き出したサッカー指導の方法論を体系的にまとめたものです。
・自立した選手を育てるために
本書の執筆意図について、まえがきに次のように記されています。(7ページ)
日本人を見ていると、自分の人生は自分で選べるにもかかわらず、周りや環境のせいにして選ぼうとしないと感じるときがあります。ひょっとすると日本人は、もともと自分の人生を主体的に生きることが苦手なのかもしれません。それでも、私は心に決めました。
「サッカーの世界で、それを変えられないだろうか?
主体的にプレーする、自立した選手を育てられないだろうか?」(中略)
「日本人が世界で勝つための<プレーモデル>を作り、16歳までにそれを落とし込んで、あとは自由にするチームを作ってみたい」
自立した選手と自立したチームを作るために、サッカーにおける1つの「型」としてまとめたものが「岡田メソッド」なのです。
・サッカーの分析ができるようになる
上述の通り、本書はサッカーのコーチやプレイヤー向けの指導書ですが、試合観戦を中心とした一般のサッカーファンが読まれても、サッカーをより深く理解できるようになります。
コーチが選手に何を指導するかを決めるためには、選手に欠けている点をつかまなければいけません。そのために第7章「ゲーム分析とトレーニング計画」が設けられています。
この章では、ゲーム分析のフレームワークが示されています。このフレームワークとチェックリスト(196ページ)を参考にしながらテレビを見れば、今まで以上にサッカーを楽しめるはずです。
近年、サッカーの戦術論については様々な専門書が出ており、一般の方々も多くの知識をお持ちだと思います。
本書を読まれる際に注意していただきたいのは、本書は岡田氏の実践の結果をまとめたものであるため、一般に使われている用語と異なる用語が使われている点です。
例えば、試合の攻守が変化する局面を、近年ではネガティブ・トランジション(攻撃から守備)、ポジティブ・トランジション(守備から攻撃)と表現することが多いのですが、本書では各々を「ボール・ロス」「ボール・ゲット」と表現しています。
これ以外にも「ガス」「ドック」など本書独自の概念が数多く登場します。
ただし、この点については編集サイドも認識しており、専用の用語集が別添されていますので、こちらを参照しながら読まれればよいでしょう。
・マネジメント本として読める
本書を当ブログで取り上げた最大の理由は、本書はマネジメントの指南書としても秀逸だからです。
岡田氏はサッカー監督退任後、多くの経営人との交流を進めており、そこから得られた知見が本書にフィードバックされています。執筆意図が「主体的な行動を促す」ことですから、経営との共通点が多いのも当然かもしれません。
第8章「コーチング」の第3節「リーダーとは」(260ページ)の文章は、組織で働かれているすべての人々を勇気づける名文です。
(ちなみに、戦後日本人の中で、最大のプレッシャーに遭遇しそれを克服したのは、フランスW杯予選の岡田氏と長野五輪の原田雅彦選手でしょう。私はプレッシャーに負けそうな時に、ジョホールバルのラーキンスタジアムと豪雪の長野のジャンプ台を思い出すようにしています)
本書を読み終え、あとがきを読んでいると、そこに書かれている担当編集者が、以前、仕事をご一緒した方だったので驚きました。
その方は、ビジネス書の出版社に勤めながらサッカー書籍を編集するのが夢とおっしゃっていまして、それが実現した際に献本もいただきました。
「ワールドカップが夢だった。」
あれから15年、今後のサッカー界に、さらにインパクトを与える作品が生みだされました。
私が長々と駄文を連ねるよりも、編集者ご本人が本書の製作過程をnoteにまとめられていましたので、こちらを参照していただいた方が良いでしょう。
「岡田武史さんがサッカーを理論的に体系化したー書籍『岡田メソッド』ができるまで
https://note.com/f30103/n/n844303bb2c0c
本書の帯文には、まえがきから次の文章が引用されています。
「プレーモデルが確立されればW杯で優勝を争う日が来ると本気で信じています。」
これは、絵空事ではありません。
私が紹介するまでもなく、既に本書は多くのサッカー指導者や選手達の手に届いているはずです。彼らひとりひとりが、この知識を共有し、それを次世代の選手たちに伝えていけば、我が国のサッカーのレベルは必ず変わっていくでしょう。
1冊の本が未来を変えていく。本の持つ可能性が感じられる稀有な1冊です。
公認会計士の武田雄治先生から新刊 『「経理」の本文』を献本していただきました。
本書は上場企業の経理部員の方々を読者対象とし、経理部門の存在意義や業務内容をまとめた1冊です。
タイトルの印象から、経理部員としての心得などの精神論中心の書籍と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、むしろ内容の多くは経理業務を効率化するためのノウハウ集になっています。
具体的な手法に言及する第3章から第4章は、通常の経理実務の書籍とは異なり、ディスクロージャー制度への対応が前提となる上場企業特有の論点を含んでいるのが特徴です。
第3章 経理部の日常業務とは -日常的に経理部員は何をすべきかー
第4章 経理部の決算業務とは -ディスクロージャーのために経理部員は何をすべきかー
第5章 経理部のサポート業務とは -経営をサポートし、企業価値を高めるために経理部は何をすべきかー
特に第4章 「経理部の決算業務とは」は、作者が今まで執筆してきた決算早期化書籍(「決算早期化の実務マニュアル」等)のエッセンスがまとめられており、この章だけでも定価以上の効果が得られることは保証しておきましょう。
(書籍の値段の2千円など、残業1時間分にすぎないんですからねえ。この第4章のルールを社内で徹底できれば、その数百倍の時間は削減できるのでは)
一方、作者の意図は単にノウハウを伝えるだけではなく、経理部員としてのマインドセットの提示にあるのでしょうから、私も、本書が示す経理部門のあり方を、過去の2冊の書籍と比較しながら読んでみました。
一冊目は、昭和50年代(1970~80年代)の高度成長・インフレ時代に著された井原隆一氏の「財務を制するものは企業を制す」 (PHP文庫)です。
井原隆一氏は、かつての埼玉銀行で経理部門を支え専務を務められた実務家で、言い切り調の文体が昭和の頑固親父を連想させます。
もう一冊は、会計ビックバンと呼ばれる、我が国の会計制度改革が進められた2002年に刊行されベストセラーとなった金児昭氏の「教わらなかった会計」(日本経済新聞社)です。
金児昭氏も信越化学の経理部員としてキャリアを重ね同社の常務取締役まで昇りつめたバリバリの実務家です。本書のヒット以降、2013年に亡くなられるまで100冊(!)を越える著作を残しており、ビジネス書籍の一時代を築いた作家と言えましょう(ちなみに、私の日経での担当編集者は「教わらなかった会計」を編集した方だったため、金児氏にまつわる愉快なエピソードも色々教えていただきました)。
経理部門の目指す方向性として、単なる集計係ではなく現業部門のサポート部門へ進化すべきという点は3者に共通するものです。
むしろ、この時代が異なる3者の主張に変化や違いがあるのかに注目しながら読み返してみると次の2点に気づきました。
1 コンプライアンス意識の変化
井原氏の著作には次のような表現が出てきます。
「会社を食う白蟻 -公私混同」(p116)
「社用族が会社を斜陽にする」(p120)
まさに、植木等の無責任シリーズの感覚で昭和の時代には一般的なものだったのでしょう。
また、金児氏も経理の役目として資産の保全を重要なポイントしてあげており「必死の覚悟で会社の財産を守ること」(p17)と表現しています。これは、株や投資信託などへの投資を戒めることと合わせて説かれており、まだバブルの痛手が消えていないことがわかります。
当然ながら、現代の経理部門においても資産の保全は重要な業務の一つですが、内部統制制度の整備と世の中のコンプライス意識の高まりから、資産保全のウエイトは経理部門というよりは全社的な役割に変化していることを感じました。
2 経理業務の存在意義の変化
現代の経理業務は、 「AIに業務を奪われてしまうのではないか」つまり、業務の存続可能性が話題となっており、武田氏の問題意識にも表れています。
これは、経理部門の存在自体は当然の前提となっていた井原氏、金児氏の時代にはなかった視点であり、昨今、公認会計士協会もこんなビデオを作成しています。
「公認会計士のしごととAI」
武田氏は第6章の中で経理部員のための7つの心得を上げていますが、その中で
心得10 自社のストーリーを描け
心得11 わかりやすく表現するプレゼン力を身に付けよ
といった内容は、従来、経理部門の業務範囲とは考えられていなかったものです。
技術革新によって業務形態が変化していくのは、蒸気機関が発明された産業革命の時代から続く必然であり、特に騒ぎたてるようなものではありません。
今では鉄道の改札口に切符切りの鉄道員がいなくなったように技術革新によって従来の単純労働から解放されるのは、むしろその業界にとって望ましいことでしょう。
ただし、その変化に気づかないままでは自らの業務の存在意義が危ぶまれる状況にあるのも事実です。
では、今後、我々、会計に関わる人間が進むべき領域はどこなのでしょうか。
従来の会計基準は会計実務から演繹的に作成されていましたが、IFRSをベースとした現代の会計基準は、理論からスタートする演繹的な手法で開発されています。
その結果、外部開示用の制度会計と内部で利用する管理会計領域の乖離が年々大きくなっています。例えば新しい収益認識基準は、社内の管理指標として使いようのない代物になっています。
我々、特に上場企業の会計に携わる部門の活動は、この制度会計と管理会計の乖離をどのような方法で埋めていくのかという領域に移っていくのだと、私は考えています。
武田氏の著作の書評から、かなり離れてしまいましたが、経理部門も昭和、平成の時代を越え、あたらしい令和の時代を迎えたことを感じる一冊でした。
昨日、10月30日付で企業会計基準委員会から企業会計基準第29号『収益認識に関する会計基準』の改正案が公表されました。
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2019/2019-1030-1.html
2018年3月30日に公表された企業会計基準第29号『収益認識に関する会計基準』では、表示及び注記事項についての詳細は定められておらず適用開始時までの検討課題とされていました。
そこで、今回公表された公開草案では、収益の表示方法及び注記事項についての詳細が追加されています。
注記事項は、基本的にIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」において求められている項目とし、重要性が乏しい場合には注記を省略できる旨を規定することで業務負荷の軽減が図られています。
公開草案へのコメント募集期日は2020年1月10日です。
2019年10月1日から消費税率が10%に改正されるとともに新しい軽減税率制度が導入されました。
消費者向けの小売業では税率改正時の10月1日がひとつのヤマでしたが、一般の事業会社においては税率改正から最初の月次決算をむかえるこれからが勝負所です。
そこで、2019年10月度の月次決算における留意点ついて簡単にまとめておきます。
・旧税率と新税率の分類
事業者間取引においては一定の締日ごとの請求が多いため、税率改正直後の請求時には旧税率と新税率が混在します。両者が適切に区分されているか確認しましょう。
特に不動産関連取引の場合、賃料(翌月分)、管理費や光熱費(当月、前月分)など同一の請求書に計算期間が異なる項目が含まれます。さらに、資産の貸付にかかる経過措置の適用対象か否かも契約ごとに判断する必要があります。
・値引・返品の扱い
値引及び返品は、税率改正時の経過措置によって2019年10月1日より前に行った売上によるものについては旧税率(8%)が適用されます。
ただし、業態によって販売時期を特定できないケースもあるため、合理的な方法(10月中の返品は9月までの販売分とみなす等)を継続的に適用することも許容されています。
・販売奨励金の処理
軽減税率の対象となる飲食料品の販売にともなう販売奨励金やリベートは、対価の返還等に該当し軽減税率が適用されます。ただし、その内容が役務の提供への対価である場合には標準税率(10%)が適用されます。
販売奨励金やリベートには様々な性質のものが混在しますので、どの税率を適用するのか取引先と調整しておきましょう(軽減税率QA(個別事例編)Q42参照)
・旅費交通費の精算
旅客運賃については、10月1日より前の購入分については旧税率(8%)が適用される経過措置があるため、10月分の精算分には複数の税率のものが混在する可能性があります。旅費交通費の精算書は、経理部門以外の一般部門の方々が作成するため、間違いやすい論点については事前に社内にアナウンスしておきましょう。
・データ取込の見直し
近年のクラウド系会計ソフト(freeeやMFクラウド等)では、取り込んだ預金の入出金データをもとに仕訳を自動生成します。10月1日以降、1つの入出金の中に複数の税率の取引が混在する場合には、自動仕訳のロジックを見直さなければいけません。
経理部門やシステム部門の皆さんは、これまでも十分な準備を行ってこられたと思いますが、実際に月次処理を行うと想定外のケースが生じるはずです。
まずは、10月の月次処理で問題点を洗い出し、11月以降の処理に持ち越さないようにしましょう。
『旬刊 経理情報』2019年10月10日号の書評欄に、KPMG あずさ監査法人アカウンティングアドバイザリーサービスが執筆した「勘定科目統一の実務」の書評を寄稿しました。
文章の中身とはまったく関係ない話ですが、最初に渡した原稿がレイアウトピッタリの文量でして、編集者からの修正も1か所(「様々」を「さまざま」に開く)のみで脱稿したのは、我ながらプロの仕事と感心しました。
経理関係の専門書ではありますが、お手許にございましたら御一読いただければ幸いです。
本日、2019年10月1日から消費税率が10%に改正されました。
あわせて軽減税率制度も導入され飲食料品と新聞については軽減税率8%が適用されます。
コンビニエンスストア各社がどのような対応をしているのか見ていきましょう。
最初はセブンイレブンです。
セブンイレブンでは、単体の価格を税抜表示(先日のブログでも取り上げました)。軽減税率対象品との区別には「*」を印字しています。
また、キャッシュレス還元2%分について「即時充当」方式を採用し支払額から直接控除しています。
https://www.sej.co.jp/var/rev0/0002/2290/11996125654.pdf
続いてファミリーマートです。
ファミリーマートでは、単体の価格を税込表示。軽減税率対象品との区別には「軽」を印字しています。
(ちなみに商品名の「黒白7本短冊付」は不祝儀袋ですので標準税率の10%が適用されています)
こちらもセブンイレブン同様、キャッシュレス還元2%分の4円は即時充当方式で代金から直接控除しています。
https://www.family.co.jp/services/other/info1910.html
最後にローソン。
ローソンでは、単体の価格を税込表示。軽減税率対象品との区別には「軽」を印字しています。
このレシートだとわかりづらいのですが、ローソンも上記2社同様「即時充当」方式を採用しキャッシュレス還元2%分を支払代金から控除しています。
https://www.lawson.co.jp/service/others/taxes/
このように、大手コンビニはキャッシュレス還元のポイントを「即時充当」方式で支払額から直接控除しています。
では、このようなレシートにもとづいて、どのような経理処理をすればよいのでしょうか。
購入に伴って発生したポイントは、本来「雑収入」として認識するのが理論的ですが、実務上は出納額と合わせるために購入時の値引として処理ケースが一般的です。
標準税率(10%)と軽減税率(8%)のように税率の異なる商品を同時に購入した場合、この値引額をどのように処理するかが問題になります。
消費税法の軽減税率に関する個別通達15では、次のように定めています。
軽減税率 個別通達15
「(略)一括して対価の額の値引きが行われており、当該資産の譲渡等に係る適用税率ごとの値引額又は値引額控除後の対価の額が明らかでないときは、割引券等による値引額を当該資産の譲渡等に係る価額の比率により按分し、適用税率ごとの値引額及び値引額控除後の対価の額を区分することとなることに留意する」
値引額を値引前の価額の比率で按分することを求めています。
さらに、上記通達の後段に次のような記述があります。
「なお、当該資産の譲渡等に際して顧客へ交付する領収書等の書類により適用税率ごとの値引額又は値引額控除後の対価の額が確認できるときは、当該資産の譲渡等に係る値引額又は値引額控除後の対価の額が、適用税率ごとに合理的に区分されているものに該当する。」
つまり、レシート等の記載で税率ごとの値引額が確認できれば、必ずしも按分計算によらず、標準税率分から優先的に充当するといった方法でも合理的に区分されているものとみなされます。
ただし、コンビニ3社のレシートとも値引額を税率ごとに区分して表示していません。
したがいまして、当ブログ上で公にできる結論としては
「軽減税率 個別通達15にしたがって値引分は税率ごとに按分して処理する」
という記述になってしまうのですが、実務上は難しいのではないでしょうか。
経理業務に携わっている方々は10月1日からの消費税改正対応でご多忙の日々を過ごされていると思われますが、同じ10月1日に新しい地方税共通納税システムもスタートします。
それに合わせて昨日(24日)から地方税のポータルサイトであるeL TAXも新しいアドレスになりました。
地方税が10月1日から新システムになることは私も存じ上げていたのですが、この改正にあわせて9月21日から9月30日まで以下の電子納税サービスを使用できないことに昨日、初めて気づきました。
「電子納税サービスが利用できない期間について」
https://www.eltax.lta.go.jp/news/00362
・納付情報の発行依頼
・納付情報の受け取り
・eLTAXを通じた電子納税
電子納税に慣れているクライアントの方は、既に納付書を処分しているかもしれませんのでご注意ください。
本筋から外れますが、システムと会計の接点を取り上げる当ブログとしてはそれ以外に気になる論点があります。
eL TAX上で電子申告用に無償で提供されているソフト「PC desk」も昨日最新版にアップデートされました。
電子申告用のデータはXML形式でそのまま見ることができないため、サードベンダーの電子申告ソフトにはPDFに変換する機能が付いています。従来、PC deskには、このPDF変換機能が付いていなかったのですが、今回のアップデートで同機能が加えられています。
大変便利になって助かるのですが、ひとつ気持ちの悪い部分があります。
それは、申告書に記載する税理士署名欄の電話番号です。
地方税の申告書の税理士署名欄は右下に縦書きになっており、ここに税理士名と電話番号を記載するのですが、 電話番号も単純に縦書きに変換しているのでハイフンが横になってしまうのです。
同じN〇〇グループが提供している「電子申告の達人」では、縦に横書き(下図のイメージ)にしているので、こちらの方がよかったのではないでしょうか。
【追記】
電話番号などというつまらない話ではなく、システム移行に関する真面目な話を追記しておきます。
24日以降は古いPc Deskソフトは使えないため、新ソフトにアップデートする必要があります。
その際に、古いソフトで「データ取り出し」処理をしてから新ソフトをインストールしないと面倒な手続きが必要になるのでご注意ください。
今時、こんなオペレーションを要求するソフトは珍しいので、まずは PC desk データ移行マニュアル を一読されてからバージョンアップすることをお勧めします。
セブンイレブンが消費税の計算方法を変えたことが話題になっています。
https://www.sej.co.jp/company/important/201909062030_copy.html
この変更について、9月18日付の日経新聞朝刊の記事では
「単品ごとに消費税を加算する計算方法から、購入する全商品の合計に加算する方法に変えたのが理由」
と書かれていますが、この記載内容は間違っています。
セブンイレブンが行った計算方法の変更は、 「税込価格の合計額に8/108を乗じる」方法(消費税法施行規則 附則(平成15年9月30日財務省令第92号)第2条第3項による経過措置)から「税抜価格の合計額に8/100を乗じる」方法(消費税法施行規則 附則(平成15年9月30日財務省令第92号)第2条第4項又は第5項による経過措置)への変更です。
消費税の端数処理は請求書又は領収書の単位で1度だけ行い、「単品ごとに消費税を加算する計算方法」は現行法においても認められていませんので、セブンイレブンもそのような計算方法は採用していません。
と申しましても、この消費税の端数処理の根拠条文である消費税法施行規則 第22条第1項は、総額表示導入時の平成16年3月31日をもって廃止されており、前述した消費税法施行規則の附則の経過措置によって延命している状態ですので混乱が生じるのも致し方ない状態であります。
この端数処理の当初条文から現在までの改正過程につきましては拙書「消費税軽減税率導入とシステム対応」の141ページから154ページまでに法令原文もあわせて解説しておりますので、そちらもご参照ください。
昨日、国税庁から 「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の改正版が公表されました。
「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」(令和元年7月改訂)
このQ&Aは平成28年4月の公表から数度の改訂が行われており、今回、追加又は改訂された問いの内容を簡単にまとめておきます。
基本的には従来からの考え方を踏襲したものですが、問68(遊園地の売店)で、「飲食設備」は「遊園地といった施設全体を指すものではない」と明文化されたのは、関連業界の方々の実務の助けになるでしょう。
問 14 【改訂】(みりん、料理酒、調味料の販売)
料理酒などの発酵調味料も軽減税率対象であることを追加
問22【追加】(炭酸ガスの販売)
添加物として販売されている炭酸ガスは軽減税率対象。
問26【追加】 (キャラクターを印刷したお菓子の缶詰等)
キャラクターを印刷した缶詰等も基本的には食品の販売に付帯して通常必要なものとして軽減税率の対象となる。
問27【改訂】(桐の箱の容器)
容器等に商品の名称などを直接印刷等したとしても、その飲食料品を販売するためにのみ使用していることが明らかでないものは軽減税率の対象外であることを追記。
問28【追加】(割り箸を付帯した弁当、ストローを付帯した飲料等)
食器具等も含めて軽減税率の対象。
問30【追加】(飲用後に回収される空びん)
飲用後の空びん回収時の「びん代」は軽減税率の対象外。
問41【追加】(制作物供給契約による飲食料品の譲渡等の取扱い)
飲食料品の製作物供給契約による製造においては、その取引が「(飲食料品の)製造販売」(軽減税率8%)か「賃加工」(標準税率10%)かを契約内容等により個別に判断する。
問42【改訂】(販売奨励金)
「飲食料品の譲渡」に伴う「販売奨励金」や「リベート」は、その目的や性質によって「対価の返還等」(軽減税率8%)か「役務の提供」(標準税率10%)かを判断する必要がある旨を追加。
問43【追加】(自動販売機の手数料)
「役務の提供」の対価に該当し標準税率。
問51【改訂】(屋台等での飲食料品の提供)
フードイベントについて屋台と同じ考え方を適用することを追加。
問54【追加】(従業員専用のバックヤードで飲食する場合)
従業員専用のバックヤードのように顧客により飲食に用いられないことが明らかな設備については飲食設備に該当しない。
問60【追加】(セット商品のうち一部を店内飲食する場合)
ハンバーガーとドリンクのセット商品のうち、ドリンクだけを店内飲食すると意思表示されたとしても、全体として「食事の提供」に該当し標準税率が適用される(ただし、単品で販売する場合は個々に判断する)。
問67【追加】(合意等の範囲)
「合意等」には、契約書等で明らかにされているもののみならず「黙示の合意」も含む。
問68【追加】(遊園地の売店)
遊園地という施設全体で「飲食設備」に該当するわけではない。ただし、園内に点在する売店の管理が及ぶテーブルや椅子などは「飲食設備」に該当する。
問88【追加】(食品と非売品のおもちゃの一括譲渡)
食品と非売品のおもちゃを一括譲渡する場合、非売品のおもちゃの対価を0円として按分計算することも許容される。
問89【追加】(販促品付きペットボトル飲料)
おもちゃが非売品で、おもちゃがつかなくても価格が変わらない場合、おもちゃの価格を0円として一体資産の飲食料品の譲渡に該当する。
問90【追加】(特定の飲食料品を購入した際にレジで配布される販促品)
販促品が非売品であり、販促品なしでも価格が変わらない場合、販促品の売価を0円として一体資産の要件を判断可能。
問94【追加】(食品と食品以外の資産の仕入れに共通して要した付随費用)
一体資産における食品の占める割合の計算では、①付随費用を考慮しない方法、②付随費用を各商品に按分する方法のいずれかの方法で行う。
問95【追加】(一体資産に含まれる食品に係る部分の割合の売価による判定)
一体資産における食品の割合算出にあたって、売価や原価情報の入手に制限がある場合、セット商品の売価から実際に販売されている売価を控除する方法で計算することも許容される。
問100【追加】(ホテルに対して販売する新聞)
ホテルに対して定期購読契約に基づき一定数を納品するほか、当日の宿泊客数に応じて追加部数を納品する場合、前者は軽減税率対象となるが後者は標準税率になる。
問117【追加】(年間契約の区分記載請求書)
月額料金を定めた保守サービス等で、1年間の保守料金を税率改正前に前受する場合、請求書等に旧税率と新税率の対価の額を区分して記載する必要がある。
同時に
「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」についても改正版が公表されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
以下の問が追加されています。
問40【追加】(売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日の記載)
課税期間の範囲内で一定の期間の記載も可。
問51【追加】(適格請求書等の写しの範囲)
書類そのものを複写したものに限らず、記載内容が確認できればよい。
問66【追加】(見積額が記載された適格請求書の保存等)
見積額が記載された適格請求書の交付が受けられない場合でも、電気、ガス、水道水の供給のように継続して行われる取引については、その後、金額確定時の適格請求書を保存することを条件として見積額で仕入税額控除可能。
問78【追加】(売上税額の積上げ計算における適格請求書の交付の範囲)
スーパーのレシートのように適格請求書を交付しようとしたものの顧客が受け取らなかった場合でも、積上げ計算の対象にできる。
【ご案内】
おかげさまで、みずほセミナーの軽減税率セミナーが3度目の追加開催となりました。
2019年8月7日(水)
総点検!『軽減税率・インボイス方式』をめぐる消費税システム対応」
https://www.mizuhosemi.com/section/accounting/19-10845.html
多くの方のご参加をお待ちしております。
弥生会計のユーザー向け広報誌 弥報Magazine 2019年7月号に「基本から知っていこう!誰もがはじめての軽減税率制度」を寄稿しました。
2019年10月の軽減税率制度導入まで、残された時間は後2ヵ月。
昨年の弥報Magazine 11月号でも軽減税率制度の記事を寄稿しましたが、2ページと限られた文量でしたので軽減税率の留意点のみをご紹介しました。
今回は、誌面も増えましたので
基本をおさらい 「軽減税率 基本のき」
疑問点を解決 「こんなこと、困っています」
確認しておきたい 「経過措置について」
と読者の皆さんの理解度に合わせた構成になっています。
特に、 「軽減税率対策補助金」「キャッシュレス・消費者還元事業」といった支援制度については、事業者側から申請や登録といったアクションを起こす必要があります。申請期限にも注意して、有効に御利用ください。
会員向け広報誌のため一般の方は入手が難しいかもしれませんが、弥生さんの広報誌は30万部(!)も発行されているそうですので、どこかで見かけられたご一読いただければ幸いです。
【ご案内】
おかげさまで、みずほセミナーの軽減税率セミナーが3度目の追加開催となりました。
2019年8月7日(水)
総点検!『軽減税率・インボイス方式』をめぐる消費税システム対応」
多くの方のご参加をお待ちしております。
2019年7月8日付で、日本公認会計士協会IT委員会からIT委員会研究報告第53号「IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A」が公表されました。
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20190709ied.html
この改正については、4月9日に公開草案が公表されており、従来の研究報告からの改正点については4月9日付の当ブログで解説していますので、今回は公開草案からの改正点についてみていきましょう。
公開草案に対して寄せられたコメントへの対応表では公開草案から特段の改正がないように見えますが、文章表現等を含め最終版では次のような修正が行われています。
1.関連規定の追加
各問の下に記載されている関連規定の記載を監査基準委員会報告等も含めた詳細な記述に変更。
2.最終版で新たに追加された文章
公開草案に含まれていなかった次のような文章を追加。
A6 3行目から
なお、財務報告に関連する情報システムの理解の範囲は、監査人の職業的専門家としての判断に基づいて決定される事項です。財務諸表に開示される情報には総勘定元帳や補助元帳からだけではなく、それ以外から得られる情報も含まれるため、監査人が理解すべき財務報告に関連する情報システムには、総勘定元帳や補助元帳以外の情報システムのうち、注記事項に関連する部分が含まれます(監基報315 A87 項)。
A9 7行目から
さらに、監査人は、アプリケーションによって作成される財務情報の信頼性を確保することに関連する内部統制を識別し評価する必要もあります(IT実6号第23 項)。
ITを利用した情報システムに対する内部統制には、業務処理統制と全般統制が含まれます。監査人は、企業の統制活動の理解に際し、ITに起因するリスクに企業がどのように対応しているかを理解しなければなりません(IT実6号第29項)。
3.文章表現に関する修正
上記以外は、文章表現に関する修正であり、例えば次のようなものです。太字が最終版における修正箇所( )内赤字が公開草案時の文章。
A1
なお、ITから自動生成される情報を利用して実施される手作業による内部統制の評価を行う場合、手作業に利用する情報を自動生成するような機能についても、自動化された業務処理統制と同様に必要な評価作業を行うことがあります(求められます) 。このような情報の自動生成の機能は、全般統制により支援されるITにより自動化された機能であるため、当該機能それ自体の評価のみならず、関連する全般統制の評価を行う(が必要となる)ことがあります。
A3
なお、グループ監査における重要な構成単位に対して実施する(しなければならない) 「ITの利用に関する概括的理解」は、ITの利用に伴う重要な虚偽表示に関する潜在的リスクが十分に低いか否かを判断することが重要です。
A7
企業が市販のパッケージ・ソフトウェアを利用している場合であっても、監査人 は、当該パッケージ・ソフトウェアによる計算処理の妥当性等について検証すること は重要(が必要になる)と考えられます。
また、今回のIT委員会研究報告第53号の公表により、従来のIT委員会研究報告第42号は廃止されます。
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20190709rhz.html
消費税率引上げに対応する消費活性策として、2019年10月から導入が予定されている「キャッシュレス・消費者還元事業」の消費者向けリーフレットが、経済産業省のポータルサイトで公表されました。
https://cashless.go.jp/assets/doc/consumer_leaf_introduction.pdf
今回公表されたのは制度の概要を説明するパンフレットですので、詳細については既に公表されている事業者向けの登録要領等を参照する必要があります。
ちなみに、経済産業者が管轄するこのHP、当初は消費者向けの詳細を「5月ごろ公開予定」と表示していたのですが、現時点においても「近日公開予定」のままになっています。
制度開始まであと3ヵ月しかありませんが、大丈夫なんでしょうか?
【ご案内】
2019年8月7日(水)に、 みずほセミナーで下記講座を開催します。
「消費税『軽減税率・インボイス方式』の導入とシステム対応」
多くの方のご参加をお待ちしております。
昨日、国税庁HPにおいて「消費税の軽減税率制度に対応した経理・申告ガイド」が公表されました。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0019005-113.pdf
このパンフレットは、軽減税率導入後の記帳方法から申告手続きについて解説したパンフレットであるため、一般の方々というよりも経理部門や税理士向けの内容になっています。
しかし、この新しい付表1-1と1-2の様式の煩雑さを見ると、10月以降の申告作業が思いやられます。
このたび、拙書『この一冊ですべてわかる 会計の基本』が、2010年の刊行から14度目の増刷となりました。
これも、ひとえに読者並びに営業部門を中心とした日本実業出版の皆様のご協力のおかげです。この場をお借りして御礼申し上げます。
本書は会計の基本書でありますが、増刷のたびに最新の会計制度にあわせて改訂を行っています。
今回の改訂では、決算書の日付表記を「邦歴(令和)」にするか「西暦」にするかで頭を悩ませました。
結論としては招集通知のいわゆる株懇モデルに準じまして
「明示しない(○年○月○日等と表記」
方向で対応しております。(弱気な折衷案で申し訳ありません)
書店で目にされる機会も増えると思いますので、その際は、一度、お手にとっていただければ幸いです。
新元号を迎えてから最初の更新となりましたが、令和の時代も引き続き、よろしくお願いいたします。
本日、国税庁HPにおいて「新元号に関するお知らせ」が公表されており、次のような案内がでています。
・新元号への移行に伴い各種様式は順次更新するが、当面の間、各様式の「平成」は「令和」などに読み替えて使用する。
・納税者からの提出書類は平成表記の日付でも有効なものとして取り扱う
税務実務においては、5月10日に納期を迎える源泉所得税の納付書(正確には「源泉所得税の所得税徴収高計算書」)の記載方法が気になるところだと思いますが、その点については既に「改元に伴う源泉所得税の納付書の記載のしかた」が公表されています。
・手持ちの納付書に印字されている「平成」の抹消や「新元号」の追加記載などにより補正は不要。
・平成 31 年(2019 年)4月1日から新元号2年(2020年)3月末日の間に納付する場合、納付書左上「年度欄」は「31」と記載する。
・「支払年月日」や「納期限」が「令和元年XX月」の場合には「01XX」と記載する。
「新元号に関するお知らせ」のところで前述したとおり、納付書の記述を平成表記の「31」で記載しても有効なものとして扱われますので、ご安心ください。
今後も税務関係の書類は邦歴表示が継続されるため、西暦表示化が進んでいる金商法関係書類との混乱が懸念されます。
(ちなみに、同じ税務研究会の刊行物でも「週刊税務通信」は邦歴、「週刊経営財務」は西暦であります。)