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2017年11月

2017年11月 9日 (木)

「西郷どん」の副読本として -書評「島津久光の明治維新」-

作者の安藤優一郎氏から新刊 『島津久光の明治維新』 (イースト・プレス)を献本いただきましたので、本日は、こちらを紹介します。

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本書の執筆意図を前書きから引用します。

「一般的には西郷や大久保の言動が薩摩藩の立場や意見を代表するイメージが強いが、二人の言動は必ずしも薩摩藩を代表するものではなかったのである。藩士の大半そして島津家は倒幕路線には反対で、倒幕を強く主張する西郷や大久保たちは藩内で孤立していたからだ。」

「本書は明治維新150年を迎えるに際し、倒幕派の西郷や大久保が主役として描かれがちな薩摩藩の明治維新史を島津家(島津久光)の視点から読み解くことで、維新の再評価を試みるものである。」

私自身、日本史についてはまったく素人でありまして、島津久光という名前を聞いても「龍馬伝」に出てきた西郷隆盛の政敵という程度の知識しか持ち合わせておりませんでした。

したがいまして、本書を読むまでは薩摩藩と長州藩は倒幕でイケイケで、土佐藩の山内容堂(龍馬伝で近藤正臣が演じていた)が反対派と思っていたのですが、薩摩藩においても武力行使を伴う倒幕には反対する者が大勢だったと知りました。

そのような情勢からどのようにして明治維新が進んでいったかを理解するためには、明治維新における西郷隆盛の位置付けではなく、薩摩藩における西郷隆盛の位置付けを知る必要があり、そのためのキーパーソンが薩摩藩の島津久光になるわけです。

歴史書としての本書の意義をお伝えするには、私の知識はまったく役に立ちませんが、安藤氏と同じ作者という立場から本書を見てみると違う局面が見えてきます。

来年は明治維新150周年にあたり、それに合わせてNHK大河ドラマも西郷隆盛を主人公にした「西郷どん」と決まっています。
(ちなみに「西郷どん」の原作者 林真理子氏は現在、日経新聞朝刊で「愉楽にて」といいう連載小説を担当しておりますが、「結局、読者は俗なものにしか興味を持たない」というプロ作家の達観が滲み出る名作ですので、未読の方も是非、一度お読みください)

歴史書業界ではこの維新150周年のBigWaveが生じており、その流れに乗って安藤氏も、既に多くの西郷隆盛関連書籍を刊行しております。

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本書は、映画で言えば西郷隆盛のスピン・オフ企画ということになりますが、言い方を変えれば西郷隆盛関連著作の副産物でありましょう(原価計算で言えば連産品)。
書籍の執筆過程において、西郷隆盛に関係する島津久光についても多くの資料が集まったため、これを別の視点から一冊にまとめてみたのが本書というわけです。
先程、副産物などという失礼な表現を使ってしまいましたが、その試みは的を射たものであり、切り口を変えて題材を整理し、ひとつの作品に仕上げのは立派なプロの技術であります。

したがいまして、本書は、大河ドラマ「西郷どん」を楽しむ際に、多角的な視点を提供する副読本にふさわしい一冊です。

話は変わりますが、、歴史書ジャンルにおける「周年」ビジネスを会計業界にも適用できないでしょうか。

来年の平成30年は平成元年の消費税導入から30周年でありますから、
「祝 大型間接税導入 30周年! 一般消費税、売上税の蹉跌を越えて」
といった企画や
平成20年4月に導入された内部統制規制(J-SOX法)10周年を記念して
「祝 内部統制 10周年! 失われた「重要な欠陥」を探して」
といった企画で関連書籍をバンバン刊行し、会計書ジャンルでもBig Waveを起こしていただきたいものです。

「西郷どん」の副読本として -書評「島津久光の明治維新」-

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2017年11月 6日 (月)

IT委員会実務指針「電子開示書類等のXBRLデータに対する合意された手続業務に関する実務指針」公開草案の公表

11月1日付けで日本公認会計士協会のIT委員会からIT委員会実務指針「電子開示書類等のXBRLデータに対する合意された手続業務に関する実務指針」とIT委員会研究報告「電子開示書類等のXBRLデータに対する合意された手続業務に関するQ&A」の公開草案が公表されました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/20171101xt1.html

当公開草案は、専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」の公表を受け、従来利用されていたIT委員会研究報告第41号「XBRLデータに対する合意された手続」を全面的に改編したものです。

従来の研究報告41号に含まれていたXBRLに関する説明や具体的な手続については新たにIT委員会研究報告「電子開示書類等のXBRLデータに対する合意された手続業務に関するQ&A」に整理されています。

XBRLデータについては会計監査の対象外のため、監査人はXBRLの開示手続きに特段の注意を払いません。
会社の方々もプロネクサスさんか宝印刷さんが提供するツールにしたがって作業しているケースがほとんどだと思いますが、当公開草案を参考に自社の開示プロセスを確認しておくのも有効でしょう。

なお、公開草案への意見募集期日は平成29年12月1日です。

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IT委員会実務指針「電子開示書類等のXBRLデータに対する合意された手続業務に関する実務指針」公開草案の公表

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旬刊経理情報に『会計システムのクラウド化で気をつけたいこと』を寄稿しました

中央経済社の 『旬刊 経理情報』 最新号(2017年11月10日号)に、『自動仕訳の修正・機能の見直しは必須? 会計システムのクラウド化で気をつけたいことを寄稿しました。

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ITシステムの現場では自社のIT資源を利用した「オンプレミス」からネット上の外部資源を利用する「クラウド」化の流れが加速しています。

このクラウド化の流れは、サーバーなどのハードウェア領域から業務系システムなどのソフトウェア領域にも及んでおり、経理・財務部門も例外ではありません。

そこで、本稿ではクラウド化にともないユーザーの利用する業務システム(特に会計システム)に生じる影響と留意点について解説しています。

会計の専門誌のため、経理部門で定期購読されている会社も多いと思います。お手許にございましたら御一読いただければ幸いです。

旬刊経理情報に『会計システムのクラウド化で気をつけたいこと』を寄稿しました

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2017年11月 2日 (木)

「10歳でもわかる」と「世界一」はどちらがわかりやすいのか? 書評『10歳でもわかる問題解決の授業』

担当編集者から苅野進氏の、新刊 『10歳でもわかる問題解決の授業』 を献本いただきました。

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作者の苅野氏は経営コンサルティング会社を経て、現在、学習塾ロジムを主催しています。
学習塾ロジムでは小学生向けに「問題解決力」や「ロジカルシンキング」を教えており、その実践の成果をまとめたのが本書です。
タイトルには「10歳でもわかる」とありますが、基本的にはビジネスパーソン向けのロジカル・シンキングの入門書という位置付けになります。

本書の執筆意図として
「考える力」は生まれつきのものではなく、非常に”シンプルな技術の習得”と”気持ちの持ちよう”で大きく伸びるという実感があります。

私たちを苦しめているのは「正解を見つけられなければ、考えた意味がない」という小学校以来のテストの世界で染み付いてしまった結果主義の考え方です。

本書では、「自分で考える」ことについての”苦手意識を取り除くための心理的・技術的なコツ”を紹介していきます。(以上「まえがき」より引用)

と記されています。

単にロジカル・シンキングの技術を伝えるのではなく、閉塞感のあるビジネスパーソンのマインドを変えたいという作者の思いは、日頃、小中学生の指導に接している経験から生じた危機感の現れとも言えましょう。

【本書の構成】
序章 “自分の頭で考える力”が「あらゆる問題」を解決してくれる

【第1部】 10歳でもわかる問題「解決」力
1時間目 “限られた情報”でも「仮説力」があれば問題は解決できる
2時間目 精度の高い”仮説を立てる手順”とは
3時間目 解決力の高い人の「論理的に考える」技術

【第2部】 10歳でもわかる問題「設定」力
4時間目 本当に「取り組むべき問題」が見つかれば”具体的な行動”ができる
5時間目 本質を見つけるためのフレームワーク

タイトルからいっても本書の比較対象となるのは、渡辺健介氏の 『世界一やさしい 問題解決の授業』 (以降「世界一」と記す)しかないでしょう。

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こちらは、2007年の刊行から刷りを重ね、既に累計40万部を超える大ベストセラーです(このジャンルでこの販売数は脅威的!)。

今回、新刊の「10歳でもわかる問題解決の授業」(以降「10歳」と記す)を読んだ際には、子どもの読者も想定した「世界一」の方が、かなり簡単な内容という印象をもったのですが、10年ぶりにあらためて「世界一」を読み直してみると、書かれている内容の難易度はほぼ同レベルでした。

自分が錯覚した理由は書籍の判型と装丁によるものでしょう。
「世界一」はフルカラーでイラストの量が多く、さらに全ページ数が117ページしかありません。一方、「10歳」は通常のビジネス書と同じ白黒の四六判で239ページ。

しかし、次の写真を見ていただくとわかるように、左側の「世界一」は、POPなイラストに目がいくものの、文字組みはかなり小さく、1ページ32文字×25行の800字。
それに対して右側の「10歳」はイラスト量は少ないものの1ページの文字数は38文字×14行の532字しかありません。
一冊の情報量としては、ほぼ同程度と言えます。

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むしろ、両誌の最大の違いは本文の構成にあります。

「世界一」はロジックツリーを中心に
  「問題の設定」→「解決法の適用」
という順序で構成されているのに対して、
「10歳」の構成は、仮説検証のサイクルを回していくことを前提にした上で
   「解決力の習得」→「問題の設定」
という順序で構成しています。

教科書的には「世界一」の順序が適切と考えられますが、実際には問題を解決することよりも正しい問題設定の方が難しいため、「10歳」では通常と逆の構成になっています。

既にベストセラーである「世界一」をお読みになられた方も多いと思いますが、この構成の違いに注意しながら両誌を読み比べてみるとロジカル・シンキングについての理解が深まります。

特に、職場(または家庭?)でロジカル・シンキングの手法を伝える際には大きなヒントが得られるはずです。

「10歳でもわかる」と「世界一」はどちらがわかりやすいのか? 書評『10歳でもわかる問題解決の授業』

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