« 2016年7月 | トップページ | 2016年9月 »

2016年8月

2016年8月30日 (火)

 書評『マンガできちんとわかる!遺産相続と手続き』 ―マンガ以外の部分が勝負―

弁護士の長谷川裕雅先生 から、新刊 『マンガできちんとわかる! 遺産相続と手続き』 を献本いただきました。

201608301


長谷川先生は、ベストセラーとなった 『磯野家の相続』 シリーズをはじめ、相続に関して既に多くの書籍を著していますが、今回はビジネス書の時流にのったビジネスコミックを刊行されました。

近年、ビジネス書籍の「マンガ化」は大きな潮流となっています。
拙書 『マンガでやさしくわかる決算書』 も、発売から1年半で8刷に及んでおり、従来書籍との動きの違いを実感しているところです。

書評の前に、ビジネスコミックの分類からお話しておきましょう。
ビジネスコミックは大きく下記の3種類に分けられます。
・全マンガ … 全ページがマンガ
・マンガ半分以上 …  全ページに占めるマンガの割合が文章より多い
・マンガ半分以下 …  全ページに占める文章の割合がマンガより多い

会計ジャンルのビジネスコミックにあてはめてみると、
全マンガ…國貞克則著 『超高速 会計勉強法』
マンガ半分以上
…小宮一慶 著 『決算書速習教室』
            (マンガ110ページ/全189ページ)
マンガ半分以下…岩谷誠治 著 『マンガでやさしくわかる決算書』
             (マンガ100ページ/全227ページ)
のように対応します。

201608302


当然、マンガの量が多いほど初心者向けの入門書になりますが、単純に書籍の難易度によってマンガの量が決まるわけではありません。
マンガは1ページの原価が高いため、企画段階でページ数が決定されます。つまり、マンガの量は各シリーズごとに所与であり著者の意向で変更できるものではないのです。
そこで、ビジネスコミックの著者(及び編集者)は、与えられたフォーマットの中でどのように表現していくかに知恵をしぼります。

このような事前知識を持ったうえで本書を見ていくと、本書は全223ページのうち純粋なマンガ部分は67ページしかありません。しかし、親しみやすいイラスを用いるとともに文書部分のほとんどに図表を入れることで初心者向けの書籍であることをアピールしています。

マンガや図表を増やすと、親しみやすくて初心者も手をとりやすいというメリットがある反面、しっかりした内容を伝えづらいという欠点も生じます。

会計書籍の場合、会計知識を導入するための1冊目の入門書として割切った編集も可能ですが、相続関係の書籍の場合は、人生に数度しかないできごとであり、複数の書籍で順番に学んでいこうという読者は稀ですから、入門書でありながら実務書の内容を伝えるという矛盾した要求にこたえなければなりません。

そこで、実務に対応できる書籍にするために、著者がとった方法のひとつが冒頭にある書き込み式の図表です。

本書の冒頭には、
「相続手続きのスケジュール表」
「財産リスト」
「相続税計算シート」
「特別従駅・寄与分リスト」

201608303




が用意されています。この図表を冒頭に持ってきたことで、相続にまつわる概要を伝えるだけではなく実務書として利用できることがわかります。

初心者を意識して「やわらかい」マンガを用いながら、実際の相続手続きを完結させるという難問に、うまく挑戦した1冊と言えましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年8月 4日 (木)

「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」の公表 -これでIT部門は楽になるのか?―

8月2日付で、自由民主党政務調査会から『消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置』が公表されました。
https://www.jimin.jp/news/policy/132828.html

去る6月1日に、安倍首相が消費税率の引上げ時期を平成29年4月1日から平成31年10月1日に2年半延期することを表明しました。
その際には、インボイス方式(適格請求書等保存方式)の導入時期等、その他の税務措置の方針については明らかにされませんでしたが、当該資料によって改正措置の概要が示されました。
主要論点をまとめると以下のようになります。

消費税率10%の引上げ時期を平成29年4月1日から平成31年10月1日に2年半延期。

・インボイス方式(適格請求書等保存方式)の導入時期も当初の平成33年4月1日から平成35年10月1日に2年半延期

・軽減税率導入後、中小事業者に対する売上税額と仕入税額計算の特例措置の適用期間も2年半延期。

・当初、中小事業者以外の大企業等にも認められていた売上税額と仕入税額計算の特例措置は適用されない。

20160804


売上税額計算の特例措置とは、軽減税率対象品と標準税率対象品を区分できない事業者に対して、売上税額を
① 軽減税率商品の仕入割合
② 連続する10営業日における軽減売上割合
③ 一律50%

を用いて簡便的に計算するものです。

同様に、仕入税額の特例措置は、軽減税率対象品と標準税率対象品を区分できない事業者に対して、仕入税額を
① 軽減税率商品の売上割合
② 簡易課税の事後的な適用

によって簡便的に計算します。

延期前の法令では、上記特例計算について中小事業者以外の大企業にも1年間の期限付きで適用が認められていましたが、2年半の猶予が与えられたことから大企業については適用されないことになりました。

特に、連続10営業日の軽減売上割合を用いる方法は、どの10日間を採用するかは任意であり、これを大企業に適用するならば、一番有利な10日間を選ぶことで数億単位で納税額に影響が出ます。

こんな面倒なシミュレーションを経理部やIT部門がやらされたら堪らないなあと思っていましたので、大企業への適用が中止されたのは経理やIT部門の方々にとっては、むしろ朗報と言えましょう。

10%への税率改正時期が延期されてもインボイス方式の導入時期は平成33年4月のまま延期されないという最悪のシナリオも予想していたのですが、それが杞憂に終わって何よりです。

このエントリーをはてなブックマークに追加

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年7月 | トップページ | 2016年9月 »