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2015年12月 8日 (火)

書評『ITエンジニアとして生き残るための会計の知識』とSE本の興亡

公認会計士の原 幹先生 から、新刊の 『ITエンジニアとして生き残るための会計の知識』 (日経BP社)を献本いただきました。

先日、書評を掲載した『「クラウド会計」が経理を変える!』 が9月の発売ですから、立て続けの刊行になります。

20151208


(Disclaimer)
評者である私自身も同類の会計書籍を上梓しているため、書評の中立性に問題が生じる恐れがあります。
ということで、今回は、少し書評を離れSE向けの会計本の歴史を紐解いていきましょう。


SE(システムエンジニア)は1980年ごろ、電子計算機の普及にあわせて広がった職種です。
SE向けの書籍の中心は開発言語を解説した技術書だったのですが、徐々にビジネス書に近い領域の書籍が増え始めました。

その萌芽となったのが、ワインバーグの一連の書籍です。



その後、情報システムの発展にともなって従事者も増加し、SE向けの書籍がビジネス書の中でも一定の需要を生み、「SE本」と呼ばれるジャンルが生まれてきました。

私が、SE本における会計書籍のターニングポイントと考えるのは、 2001年に小橋淳一氏が著した 「経理・財務知識の再入門講座」 のヒットです。



私が本書を手にとったのは、システム開発の現場を離れ既に公認会計士になってからですが、自分が新人SEのころにこのような本があれば良かったのになあと思わせる内容でした。

本書が、それまでの会計書籍と違ったのは、単に会計知識を伝えるのではなく業務のプロセス、つまり業務知識として伝えている点です。

この書籍の成功後、SE向けに様々な業務知識を解説した書籍が増え、SE本のジャンルが広がっていきます。

書籍だけではなく、このころはSE向けの雑誌も隆盛であり、雑誌の連載を書籍化したものも多く生まれました。
DB Magazineに連載を続けていた梅田弘之氏の一連の著作は、現在でも参考になります。

この2000年代の前半が、SE本のピークと思われます。
その勢いに便乗して、私も2006年に 『超図解 新人SEのための会計&業務の基礎知識』 を刊行しました。

しかし、この本は現在では入手できません。
それは、絶版になったからではなく、発売直後の2007年に出版元のエクスメディア社が倒産してしまったからです。
エクスメディア社はパソコンユーザー向けの超図解シリーズで躍進した出版社でしたが、Windows95から始まったパソコンブームも次第に沈静化していき、新たな需要を築けませんでした。
(なお、エクスメディア社は出版社にもかかわらず、社内にデザイン室があるなど編集手法が独特で、著者としては大変、勉強になりました。)

パソコンがコモデティ化して行くのと並行して、エンタープライズ向けのシステム構築も従来の受託開発からSAP等のERPを用いたパッケージ開発に移行していきます。
この地殻変動にともなってSEを冠した書籍は徐々に減少し、最近ではITエンジニアやITコンサルタントといった名称に置換えられていきました。

2000年代には
COMPUTER WORLD(IDGジャパン)
IT アーキテクト (IDGジャパン)
月刊 コンピュートピア (コンピュータエージ社)
Software People (技術評論社)

といった開発者向けの書籍が多くありましたが、現在は既に廃刊しています。日経BP社の発行していた「IT プロッフェショナル」誌が「日経システム構築」誌と統合して「日経SYSTEMS」に生まれ変わるなど、銀行業界同様の再編もありました。

現在では、かつてのSE本ジャンルの会計書の出版は減少しており、私の手許にあるものとしては、

2012年に吉田延史氏が刊行された「 ITエンジニアのための会計知識41のきほん」(インプレスジャパン) が最新の作品になっています。
(なお、本書では、最後のコラム 「ステップアップのための書籍紹介 」で拙書 「会計の基本」 を推薦していただいています。この場をお借りして御礼申し上げます)


無駄に長い前フリから、評書の解説に戻ります。

評書も、これまでのSE向け会計本と同様に、最初に会計の基本的知識を、次に会計業務のプロセス会計システムの機能と関連付けながら解説していきます。
本書の特色は後半にあります。

第5章では、 「顧客向けITプロジェクト」 参画時に必要な知識として ・原価計算 ・売上の計上、工事進行基準 ・プロジェクト別損益 を解説。

第6章では、 個々のプロジェクトからさらに一歩進み、 「事業計画」 作成に必要な知識として 事業計画の作成手順 ・KPIとなる財務指標を紹介。

最後の第7章 では「社内IT投資」に必要な会計知識として投資の効果測定にまで言及しています。

本書は、SE本の系譜を継ぐ書籍として十分な内容を持つだけではなく、現代のITエンジニア、ITコンサルタントの業務領域までを抑えた書籍と言えるでしょう。

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