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2014年2月19日 (水)

決算書本はこれを読め! 【書評】『決算書でわかる!いい会社、やばい会社は「ここ」で見抜く!』

先日、ダイヤモンド社 さんから大畑伊知郎先生の 『決算書でわかる! いい会社、やばい会社は「ここ」で見抜く!』 を献本していただきました。

早速、書評をあげようと思ったのですが、評者である私自身も同類の決算書本を上梓しているコンペティターであります。
そうなりますと、 「書評の中立性を保てるのか?」 という厄介な問題が生じてきます。
そこで、今回は趣向を替えて、決算書本というジャンル全体を俯瞰的に解説していこうと思います。

(以降の文章における拙書に関する記述は、自らの利益最大化を目指すポジショントークが多分に含まれていますのでご注意ください)

会計書籍も様々なジャンルに分かれており、その中の王道のひとつが、いわゆる「決算書本」と呼ばれる決算書の読み方を解説するものです。

次の図表は、現在刊行されている主要な決算書本をマッピングしたものです。

20140219
現在の決算書本ジャンルのベンチマークとしては、
矢島雅己氏の 『決算書はここだけ読もう 2014年版』 を基準にするのが最適でしょう。

矢島先生のこの書籍は、極めてオーソドックスな内容なのですが、驚くべき販売数を記録しております。
書籍自体の実力もさることながら、本書を、ここまで育て上げた弘文堂さんの販売戦略及び営業努力の賜と言えましょう。

昨年末に発売された2014年版は、婦人誌の年末特大号と見間違うほどの物量で展開され、現在も日本中の会計書籍の狭い平台を占領し続けています(2015年版には、特大付録にブランドバックでも付いてしまうのではないかと恐れています)。

また、 「標準書」  カテゴリーのロングセラーである
高下淳子氏 の『図解 決算書を読みこなして 経営分析ができる本』 も決算書本におけるベンチマークの一冊です。

これら、「標準書」 よりも内容を簡便化し、会計の初心者を対象としたのものが 「入門書」 になります。
この入門書カテゴリーは読者需要も高く、一攫千金(?)が狙えるため、多くの書籍が投入されており、完全なレッドオーシャン市場になっています。

このカテゴリーの代表となるのが、小宮一慶氏の 『1秒で財務諸表を読む方法』 です。
入門書においては読者への「つかみ」が大切であり、本書ではタイトルの 『1秒』 が効いています。
ちなみに、1秒でどうやって財務諸表を読むかといえば、「流動比率を見ろ」と解説されています。(私、個人の意見としては「1秒」ならば、流動比率よりも自己資本比率を見た方がいんじゃないかと思うのですが・・・)

また、拙書、岩谷誠治 『12歳でもわかる! 決算書の読み方』 も、Amazon総合1位を獲得した上に、累計4万部に達していますので、この入門書カテゴリーの代表作と言ってよいでしょう(完全なポジション・トークです)。

タイトルを見ると 「12歳で決算書が読めるわけないだろ!」 と突っ込みたくなるお気持ちはわかりますが、本書では 「B/S似顔絵分析法」 という方法で、それを可能にしています(この部分に誇張はありませんので、疑われる方は書店でお確かめください)。

「入門書」 とカテゴリーを分けるのが難しいのですが、決算書の見方よりも会計の基本的な考え方を伝えることを主題とした書籍を、私は 「導入書」 として区分しています。

この「導入書」の領域で不動の地位を築いたのが、國貞克則氏の 『財務3表一体理解法』 です。

一般に、決算書の入門書は「簿記」の知識がないことを前提としており、書籍によっては「簿記の知識は不要」とまで言い切っています。
確かに、決算書を読むのに「簿記」の知識は必須ではありませんが、財務3表(B/S、P/L、C/S)が、相互に関連していることを理解しなければ決算書を実務に利用することはできません。
國貞氏の著作は、財務3表のつながりを丁寧に説明することで大ベストセラーになりました。

「財務3表一体理解法」は、新書というフォーマットの制約から文章を中心とした説明になっているため、決算書間のつながりを視覚的に理解できるように、「会計ブロック」というアプローチを用いて解説するのが、拙書 岩谷誠治  『儲けにつながる「会計の公式」 -借金を返すと儲かるのか?』 です。

これは、当初 『借金を返すと儲かるのか?』 という単行本で刊行したのですが、ご好評いただき、現在では文庫版として、お求めやすい価格で入手可能になっています。

さらに視覚的に会計の仕組みを伝えようとした意欲作として、

國方 康任氏の 『「読まずに」わかる会計の本』 があります。

この本は、歴代の会計書籍の中でも、最も美しい本と言えましょう。
例えば、会計上のストックとフローを説明する際に、川とダムの例えを用いる書籍は多々ありますが、本書では湖のカラ―写真を1ページフルに使ってしまうという大胆な構成になっています。

はじめて決算書を読まれる方は「入門書」から読み始める場合が多いのですが、その前段階で、これら「導入書」カテゴリーの著作を1冊読まれることで、以降の学習効率が大きく上がります。

話を再度、「標準書」に戻します。
標準書は、B/S、P/L、C/Fを事例とともに解説していきますが、解説の対象が「有価証券報告書」における決算書以外の部分にまで広がると、「専門書」のカテゴリーに近づいてきます。

有価証券報告書を中心とした解説書としては、望月実氏、花房幸範氏の 『決算書分析術』
さらに、「専門書」カテゴリーの代表書としては桜井久勝氏の 『財務諸表分析』 などが有名です。
この「専門書」カテゴリーは、基本的に中央経済社さんの縄張りになっています。

専門書とは少しずれた位置に、 「危ない会社」 を見つけるという実務書の領域があります。
この領域の代表作には、国内最大手の信用調査会社である帝国データバンクさんが刊行している各種書籍があります。

帝国データバンク  『大不況下 危ない取引先の見分け方』

今回、書評の対象になっている 『決算書でわかる!いい会社、やばい会社は「ここ」で見抜く!』 は、このカテゴリーの書籍になります。

図表上は「標準書」よりも「専門書」寄りにマッピングしていますが、前半部分は初心者の方を対象とした基本的な記述で始まっているので、初心者の方が読まれても大丈夫です。

後半以降は、タイトルにあるように「やばい会社」を見分けるためのコツを、実際の倒産事例や、著名企業の比較分析を交えながら解説しています。

ということで、肝心の書評部分にたどり着くまでに、余計な文章が多すぎましたが、書評の中立性を守るためということでご勘弁ください。
(Reviewというより Propaganda になってしまい申し訳ありません)

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