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2012年6月18日 (月)

IFRSに関するオックスフォード・レポートのまとめと見所

先日、6月14日に、IFRS導入が我が国に与える影響について、オックスフォード大学の作成したレポート『日本の経済社会に対するIFRSの影響に関する調査研究 The Impact of IFRS on Wider Stakeholders of Socio-Economy in Japan』が、金融庁から公開されたことをお伝えしました。

本文に合わせて、3ページ分の要約版も公表されています。
http://www.fsa.go.jp/common/about/research/20120614/02.pdf

Oxfordcrest
(私の誤認かもしれませんが、14日に公開された直後には、この要約版は公表されていなかったと思います)

本文は200ページを越える大作ですので、お時間がない方は、この要約版が便利です。
ただし、こ要約版だけでは、本レポートの醍醐味は伝わりませんので、簡単に内容と見所をまとめておきます。



報告書全体構成

要 約
第1節 背景
第2節 目的・方法・構成
第3節 「投資家のための財務報告」の歴史、論理、影響
第4節 投資家以外のステークホールダーへの影響
第5節 会計基準設定の政治学
第6節 まとめと政策提言

要 約
(概要)

 当報告書の結論として
  「IFRSの日本における性急で強いフォームでの強制アドプションを支持しない」
 その理由として
・短期・中期的には、IFRSの導入により国際的な証券市場の本質的な効率化が促進されるとは考えられない。

・ステークホールダーに与える影響が十分に分析されておらず、日本経済に与える影響について不確定要素が多く存在する。

一方、IFRS 導入は政治経済的な駆引きの性格も有しているため、これに適切に対応しなければ、短期的には、日本の証券市場および国際的なファイナンスに支障をきたす恐れがある。

国際規制の政治経済的な駆引きに関しては、政府レベルでの対応が求められる。横断的組織でいち早くインテリジェンス対応がとられるよう体制を整えるべきである。

第1節 背景
(概要)

我が国の会計史とIFRSが拡大してきた背景の概括。

(見所)
IFRSの勢力拡大については、英米による侵略論的な見方がありますが、報告者は、そのような見方に与していない点は確認しておくべきでしょう(p23-24)。

第2節 目的・方法・構成
(概要)

当報告書における目的と研究アプローチについての解説。

(見所)
当報告書はIASBの用いる「レトリック」(当報告書中では、単に「言説」を意味し、ネガティブな意味合いを持つものではありません)の検討を目的にしています。

そのため、現代会計学の主流である統計手法を用いた定量分析ではなく、インタビューの積み重ねを中心として定性・定量的手法を折衷した方法を採用しています。

その結果、学術的には客観性に欠ける部分も生じると思われますが、読者としては興味深い読み物になっています。
ちなみに、インタビュー対象は1,000(!)を越えています(p43 図表7参照)。

第3節 「投資家のための財務報告」の歴史、論理、影響
(概要)

日本においてIASBが目標とする証券市場の効率化が図られるかどうかの検討。

(見所)
IFRSが公正価値会計だという認識が生じた歴史について、実際、IASB内部には”Fair Value Corner”と呼ばれる強硬派グループがあった(p64)。また、英語圏においても“Historical Cost” よりも “Fair Value” の方が言説効果が高かったという記述は興味深いものです(p64)。

IFRS導入によって透明性・比較可能性が高まるかという論点についてのインタビューも(生々しくて)面白いです(p75-86)。

第4節 投資家以外のステークホールダーへの影響
(概要)

IFRSが、我が国における多くのステークホルダーに資するものかの考察。

(見所)
G20サミットにおけるIFRSへの言及に関する舞台裏については、当方、初見の話ばかりでした(p129-130)。

第5節 会計基準設定の政治学
(概要)

国際規制設定ににおける政治力学の視点からの考察

(見所)
この第5節は、当報告書の白眉ですので、全文をお読みいただくことをお勧めします。
特に「海外比較のレトリック」(p152-158)における中国の対応は参考になります。

第6節 まとめと政策提言
(概要)

本研究における発見事項と提言を「国内総括」「国際対応総括」「論理的、倫理的に脆弱なレトリックの終焉」「課題」に分けて総括。

(見所)
最終的な課題として、我が国のインテリジェンス体制にまで言及するのは、会計学者によるレポートの範疇を越えているという印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、報告者である鈴木教授が感じた危機感は、当報告書から十分に伝わってきます。

(今回のまとめは、当ブログ読者の方々の利便のみを目的としたものです。
このような報告書類の一部引用は、報告者の意図を歪曲してしまう恐れがあるため、詳細については必ず報告書原文をご確認ください。)

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