2016年12月 7日 (水)

IT委員会研究資料「情報インテグリティ」の公表 -インテグリティとは何なのか?-

10月30日付で日本公認会計士協会IT委員会からIT委員会研究資料第8号「情報インテグリティ」が公表されました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/20161031vfi.html

この資料はAICPA(米国の会計士協会)及びCICA(カナダの会計士協会」)から公表されたホワイトペーパー「Information Integrity」を日本公認会計士協会が翻訳許諾の下で翻訳したものです。

20161207


この資料の目的は、冒頭に以下のように記されています。

本ペーパーの目的は、情報インテグリティの意味を定義し、その文脈を情報の利用者、作成者及び業務実施者に提供することである。 

実際、この「インテグリティ」という単語は我が国のシステム管理基準 等にも頻繁に用いられていますが、その意味について説明するのが難しい用語です。

当資料では、情報インテグリティを以下のように定義しています。

情報インテグリティは、当該情報の主題についての表現の忠実性及び情報の用途への適合性と定義される。

(原文)
In this paper, information integrity is defined as the representational faithfulness of the information to the underlying subject of that information and the fitness of the information for its intended use.

この定義だけでは、その意味するところを十分に表現できませんので、事例を交えた詳細な解説が行われています。

私自身、今まで頭の中で、 「インテグリティ=完全性」 といった単純な翻訳を行っておりましたが、この資料では完全性も含んだもっと広い概念として捉えられており参考になりました。
システム監査に携わる方だけではなく、会計監査に携わられている方々にとっても有益な資料でしょう。

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2016年11月 2日 (水)

旬刊経理情報に『スキャナ保存制度における監査対応のポイント』を寄稿しました

『旬刊 経理情報』 の最新号(2016年11月10日号)に、『スキャナ保存制度における監査対応のポイント』を寄稿しました。

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本稿では、上場企業にスキャン保存制度を導入する際に、内部統制監査に与える影響と留意点について解説しています。

平成28年度の税制改正によってスキャナ保存の要件が緩和され、受領した領収書をスマートフォンで読み取ることが可能になりました。
この改正については、新聞等でご覧になられた方も多いと思います。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/03.pdf

ただし、実際の電子帳簿保存法の条文上でスマートフォンやスマホといった定義はありません。
条文上は使用機器の違いによって手続を区分するのではなく、「当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合」というように読み取りを行う者が領収書等を受領者した者か否かによって区分しています。

また、電子帳簿保存法で用いられている「スキャナ」という単語は、一般にイメージされるスキャナだけではなくスマートフォンやデジタルカメラ等も含む概念になっています(電子帳簿保存法取扱通達 4-19参照)。

実際の条文を読まれる際には、上記2点を理解していないと今回の改正内容が読み取れないため、ご注意ください。

(補足)
本稿の入校後、電子帳簿保存法Q&A 67-2 として、コーポレートカード使用時の取扱いが追加されています。コーポレートカードによる経費精算を行っている企業の方は、こちらもご参照ください。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/dennshichobo/jirei/ans3/03.htm#a67-2

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2016年10月19日 (水)

「12歳でもわかる! 決算書の読み方」7度目の重版と6年の風雪

拙書 「12歳でもわかる! 決算書の読み方」 が7度目の増刷となりました。

この場をお借りして、読者ならびにフォレスト出版の皆様にあらためて御礼申し上げます。

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2010年の刊行から既に6年を経ており、前回2013年5月の増刷から3年半も経っていますので連絡をいただいた作者本人も驚いています。

本書は、発売当初Amazonランキングで総合1位を獲得しました。

当時、ネットでは個人ブログの影響力が大きく、小飼弾氏「404 blog not found」 磯崎哲也氏 「Isologues」 、藤沢数希氏 「金融日記」 等のブログで紹介いただいたのがブレイクのきっかけになりました。

当時の著名ブロガーの方々も、現在はメルマガを中心に活動されており、この6年間でネット上のインパクトは、個人ブログからSNSを経て「はてぶ」などのまとめサイトへと次々と移っています。
その中で、書店の片隅で風雪に堪えながら(?)6年の月日を乗り越えてきたと思うと感慨深いものがあります。

増刷のタイミングで書店で目にされる機会も増えると思いますので、紙文化の存続を助けるためにも、ご一読いただければ幸いです。

(ちなみに、この6年間で書店の数は15,314店から13,488店と11%も減少しています。2000年の21,495店からは37%(!)減)
(参考 http://www.1book.co.jp/001166.html

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2016年10月 3日 (月)

会計人コース『会計人のターニングポイント』を執筆しました

本日、10月3日に発売される 『会計人コース』 11月号(中央経済社)の巻頭企画 『会計人のターニングポイント』 を執筆いたしました。

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「会計人コース」は税理士、会計士試験受験生を対象とした書店売りの月刊誌で、このページは税理士、公認会計士をはじめとする会計人が、今までの業務を振り返り自らのターニングポイントを語るというものです(会計人版「私の履歴書」とも言えましょう)。

日経新聞の「私の履歴書」は毎月の作者によって書き振りが異なり、読みながら
「もっと、暴露しないとつまらないだろ!」
と、よく文句をつけていたのですが、いざ自分が手記を書くとなると、なかなか大胆は話は書けないものです。
(しかし、半年ほど前に執筆していた将棋の中原誠名人が、林葉直子氏との事件について言及しないのはイライラさせられました)、

先月の9月号では同じ企画を税理士の山本守之先生が執筆されていたのですが、その中に次のような記述がありました。

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「上智大学名誉教授の渡部昇一氏は、その著書『歴史の鉄則』(PHP研究所)のなかで、「税理士くらい後ろ向きの商売はない。税理士を雇う目的は、突き詰めれば、いかに税金を逃れながら、税務署に文句を言われずにすませるか」ということだとし、「税理士になりたい人は国税庁に入って定年後になるのがいい。これ以外では、結局大した仕事ができない」と言い切っている。
ちなみに、渡部氏は消費税の導入を決めたときの政府税調の特別委員である。
おそらく、渡部氏は「税理士は税務調査で事務職員に顔をきかせる職業と考えているのであろう。世の中を甘く見過ぎている。」
(「会計人コース」中央経済社、2016年9月号)

山本先生もよほど腹に据えかねていたのでしょうが、私のような小心者には、こんな肝の据わった話はとても書けません。

しかしながら、自らの業務を振り返ってみると奇奇怪怪な出来事も多々ありまして、今回の執筆を通して、あらためて運と縁のありがたさを実感した次第です。

また、今月号には
「電卓 あなたはどっち派? カシオVSシャープ」
という記事があり、編集部が両社の担当者にインタビューするという企画が載っています。私個人としてはカシオ派であり、その理由についても過去のエントリーで説明しておりますが、開発担当者の方々のお話はさらに細部に至り興味深い内容になっており、電卓マニア(?)の方々にはたまらない記事になっています。

私の会計人生活もまだまだ先は長く、今後も多くのターニングポイント(特にダウンサイドの)が待ち受けていると思われますので、読者の皆様のより一層のご声援をお願いいたします。

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2016年9月27日 (火)

IT委員会研究報告公開草案「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」の公表

昨日、日本公認会計士協会IT委員会からIT委員会研究報告「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」が公表されました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/20160926aub.html

平成28年度の税制改正によって大幅に要件が緩和されたスキャナ保存制度に対応するために、従来のIT委員会研究報告第30号「e-文章法への対応と監査上の留意点」を更新するものです。

平成27、28年度改正によって国税関係書類の電子保存の条件が緩和されたものの適正処理要件やタイムスタンプのコスト負担といった要因から、その効果が大きく表われるのは上場企業を中心とした大企業になると予想されます。
そこで、監査対象会社が同制度を適用した際の監査上の留意点について整理しています。

今回の公開草案は本文とは別に付録部分があります。

付録1 セキュリティ技術に関する解説
スキャナ保存制度を理解するための前提となる電子証明とタイムスタンプの機能について解説しています。

付録2 平成27年度・28年度税制改正の詳細
今回の改正は平成27年度改正と比較して理解する必要があるため、両年度の改正内容を簡潔にまとめています。

ITシステムに関係しない一般の方々にもわかりやすい資料になっていますので、本文よりも先に、まずこの付録部分から読まれるのがよろしいかと思います。

なお、当公開草案への意見募集期間は平成28年10月26日です。

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2016年8月30日 (火)

 書評『マンガできちんとわかる!遺産相続と手続き』 ―マンガ以外の部分が勝負―

弁護士の長谷川裕雅先生 から、新刊 『マンガできちんとわかる! 遺産相続と手続き』 を献本いただきました。

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長谷川先生は、ベストセラーとなった 『磯野家の相続』 シリーズをはじめ、相続に関して既に多くの書籍を著していますが、今回はビジネス書の時流にのったビジネスコミックを刊行されました。

近年、ビジネス書籍の「マンガ化」は大きな潮流となっています。
拙書 『マンガでやさしくわかる決算書』 も、発売から1年半で8刷に及んでおり、従来書籍との動きの違いを実感しているところです。

書評の前に、ビジネスコミックの分類からお話しておきましょう。
ビジネスコミックは大きく下記の3種類に分けられます。
・全マンガ … 全ページがマンガ
・マンガ半分以上 …  全ページに占めるマンガの割合が文章より多い
・マンガ半分以下 …  全ページに占める文章の割合がマンガより多い

会計ジャンルのビジネスコミックにあてはめてみると、
全マンガ…國貞克則著 『超高速 会計勉強法』
マンガ半分以上
…小宮一慶 著 『決算書速習教室』
            (マンガ110ページ/全189ページ)
マンガ半分以下…岩谷誠治 著 『マンガでやさしくわかる決算書』
             (マンガ100ページ/全227ページ)
のように対応します。

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当然、マンガの量が多いほど初心者向けの入門書になりますが、単純に書籍の難易度によってマンガの量が決まるわけではありません。
マンガは1ページの原価が高いため、企画段階でページ数が決定されます。つまり、マンガの量は各シリーズごとに所与であり著者の意向で変更できるものではないのです。
そこで、ビジネスコミックの著者(及び編集者)は、与えられたフォーマットの中でどのように表現していくかに知恵をしぼります。

このような事前知識を持ったうえで本書を見ていくと、本書は全223ページのうち純粋なマンガ部分は67ページしかありません。しかし、親しみやすいイラスを用いるとともに文書部分のほとんどに図表を入れることで初心者向けの書籍であることをアピールしています。

マンガや図表を増やすと、親しみやすくて初心者も手をとりやすいというメリットがある反面、しっかりした内容を伝えづらいという欠点も生じます。

会計書籍の場合、会計知識を導入するための1冊目の入門書として割切った編集も可能ですが、相続関係の書籍の場合は、人生に数度しかないできごとであり、複数の書籍で順番に学んでいこうという読者は稀ですから、入門書でありながら実務書の内容を伝えるという矛盾した要求にこたえなければなりません。

そこで、実務に対応できる書籍にするために、著者がとった方法のひとつが冒頭にある書き込み式の図表です。

本書の冒頭には、
「相続手続きのスケジュール表」
「財産リスト」
「相続税計算シート」
「特別従駅・寄与分リスト」

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が用意されています。この図表を冒頭に持ってきたことで、相続にまつわる概要を伝えるだけではなく実務書として利用できることがわかります。

初心者を意識して「やわらかい」マンガを用いながら、実際の相続手続きを完結させるという難問に、うまく挑戦した1冊と言えましょう。

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2016年8月 4日 (木)

「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」の公表 -これでIT部門は楽になるのか?―

8月2日付で、自由民主党政務調査会から『消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置』が公表されました。
https://www.jimin.jp/news/policy/132828.html

去る6月1日に、安倍首相が消費税率の引上げ時期を平成29年4月1日から平成31年10月1日に2年半延期することを表明しました。
その際には、インボイス方式(適格請求書等保存方式)の導入時期等、その他の税務措置の方針については明らかにされませんでしたが、当該資料によって改正措置の概要が示されました。
主要論点をまとめると以下のようになります。

消費税率10%の引上げ時期を平成29年4月1日から平成31年10月1日に2年半延期。

・インボイス方式(適格請求書等保存方式)の導入時期も当初の平成33年4月1日から平成35年10月1日に2年半延期

・軽減税率導入後、中小事業者に対する売上税額と仕入税額計算の特例措置の適用期間も2年半延期。

・当初、中小事業者以外の大企業等にも認められていた売上税額と仕入税額計算の特例措置は適用されない。

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売上税額計算の特例措置とは、軽減税率対象品と標準税率対象品を区分できない事業者に対して、売上税額を
① 軽減税率商品の仕入割合
② 連続する10営業日における軽減売上割合
③ 一律50%

を用いて簡便的に計算するものです。

同様に、仕入税額の特例措置は、軽減税率対象品と標準税率対象品を区分できない事業者に対して、仕入税額を
① 軽減税率商品の売上割合
② 簡易課税の事後的な適用

によって簡便的に計算します。

延期前の法令では、上記特例計算について中小事業者以外の大企業にも1年間の期限付きで適用が認められていましたが、2年半の猶予が与えられたことから大企業については適用されないことになりました。

特に、連続10営業日の軽減売上割合を用いる方法は、どの10日間を採用するかは任意であり、これを大企業に適用するならば、一番有利な10日間を選ぶことで数億単位で納税額に影響が出ます。

こんな面倒なシミュレーションを経理部やIT部門がやらされたら堪らないなあと思っていましたので、大企業への適用が中止されたのは経理やIT部門の方々にとっては、むしろ朗報と言えましょう。

10%への税率改正時期が延期されてもインボイス方式の導入時期は平成33年4月のまま延期されないという最悪のシナリオも予想していたのですが、それが杞憂に終わって何よりです。

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2016年7月21日 (木)

「マンガでやさしくわかる決算書」8度目の重版出来

日本能率協会マネジメントセンターから昨年1月に刊行した 「マンガでやさしくわかる決算書」 が、発売から1年半で8度目の増刷となりました。

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この場をお借りして、読者ならびに日本能率協会マネジメントセンターの皆様にあらためて御礼申し上げます。

テレビドラマ化された 「重版出来!」 で、高田純次演じる興都館の社長のひとことを胸に刻んで、今後も精進を続ける所存であります(しかし、これが難しい)。

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「目標は常に 重版出来です」

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2016年6月30日 (木)

【書評】「金融パーソンが押さえておくべき 相続・事業承継のツボ」

TAO税理士法人の金谷亮先生から、新刊 『金融パーソンが押さえておくべき 相続・事業承継のツボ』 (以降「承継のツボ」)を献本いただきました。

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相続税の基礎控除額引き下げを契機に、業界の内外で相続ビジネスが盛り上がっています。
その中でも、相続・事業承継といった事案にもっとも近いところで活動されているのが金融機関の営業担当者の方々でしょう。

そこで、本書は、金融機関の営業担当者を対象に、相続・事業承継対策のポイントとなる「ツボ」を解説するものです。

全体は4章で構成されています。
第1章 つぼのツボ
第2章 資産承継のツボ
第3章 提案発想のツボ
第4章 提案実践のツボ
(巻末資料) 平成28年度税制改正のツボ

まず、第1章で総論と本書の利用法、第2章で相続・事業承継に関する基本知識を解説します。
続く第3章は、顧客のニーズごとに金融機関が提案できる個別手法の解説、
最後の第4章は具体的な事例を取り上げています。

実は、金融関係者をターゲットにした相続の指南書は、既に結構な種類が刊行されています。
しかし、この手の書籍は、新しい税制改正がセールストークの肝になりますから、最新の税制改正を織り込んだ書籍を使わなければ意味がありません。
その点において本書が類書に対して決定的なアドバンテージを有しているのは明らかです。

そこで今回は、資産税を専門に活動されている税理士法人タクトコンサルティングが、税理士向けに執筆した「税理士なら知っておきたい 事業承継対策の法務・税務Q&A」 (以降「承継QA」)

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を比較対象とし、読者対象による編集手法の違いをみていきましょう。

会計・税務書籍において専門家向けと一般読者向けの最大の違いは、 
  ・根拠条文の併記
  ・仕訳の有無

の2点になります。

専門家を対象とする「承継QA」では、本文中に根拠条文が併記されているのに対して、「承継のツボ」には根拠条文は一切でてきません。
同様に、「承継QA」には、本文中のところどころで仕訳が使われていますが、「承継のツボ」には仕訳はまったく出てきません。

次に、個別論点ごとの記述内容を比較してみましょう。
事業承継の基本論点となる「非上場株式の評価方法」を見ていきます。
非上場株式の評価にあたっては、
  論点1 3種類の評価方法
  論点2  同族株主か否か
   論点3 会社規模による適用分類
という3つの論点が存在します。

当然のことながら、専門家を対象とする「承継QA」では、各項目ごとに根拠条文を織り交ぜながら詳細な説明がなされており、延べ50ページに渡って説明しています。
専門家であっても50ページの文章を読みこなすのは難しいため、主要論点を個別にQ&Aという形で抽出することで読みやすさにも配慮しています。

一方、「承継のツボ」では、論点1については各計算方式ごとの説明、論点3については評価明細書を用いた説明があるものの、論点2の同族株主については、「同族株主」という単語自体、使われておらず

「中小企業の多くは身近な親族で保有しているケースがほとんどです。オーナー経営者や後継者の保有する株式の評価は原則的な評価方法が適用される、というイメージが大切です」(「承継のツボ」p65)

という記述にとどめています。
中途半端に「同族株主」の論点に言及せずに、読者の理解度を優先した割切りが感じられます。

定義類の省略を補うために「よくある実務での勘違い」という項を設け、実務上の留意点については、別途、補足する工夫もされています。

また、「承継のツボ」では、アドバイスの対象となる資産家を「キャッシュ・リッチ」「土地持ち」「実業家」の3種類に区分し、各種法の説明ごとに適用対象となる資産家の種類をイラストを用いて表示しています。

一般読者向けの書籍においては、詳細や正確さを追うのではなく、このような「読みやすさ」への配慮が大切であり、その点において「承継のツボ」は、よく考えて編集されています。

自分も専門家のため、通常、専門書を読んでいても特段の違和感はないのですが、一般向けと専門家向けの2冊をあらためて読み比べてみると両者の違いは歴然です。
やはり、専門書を一般の方が読みこなすのは、かなり難しい作業になるため「承継のツボ」のように、一般読者と専門知識の橋渡しをする書籍の存在は貴重でありましょう。

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2016年6月22日 (水)

『無形資産の評価実務-M&A会計における評価とPPA業務―』の公表

昨日、日本公認会計士協会から、経営研究調査会 研究報告代第57号 「無形資産の評価実務-M&A会計における評価とPPA業務-」が公表されました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/20160621c80.html

この無形資産の評価は、現代会計における重要課題のひとつであり、現場で作業にあたられている方々も暗中模索しているのが現状です。

なぜ、無形資産の評価が重要課題になるのかといえば、無形資産と「のれん」の区分によって損益計算書への影響が大きく異なるため、以下のような局面に遭遇し得るためです。

下記のような状況の場合、無形資産の評価に際しては注意が必要である。
① M&Aが不正の手口として利用されていると推測される。
② M&Aに際して紛争の予防・回避の配慮がされず、交渉が公正に行われず恣意的に決定されていると判断される。
③ 入手した企業価値評価報告書や合意された買収価格を見ても、その価格が極めて過大又は過少と判断される。
 (当研究報告 13ページより)

会計業務に携わられている方でも、無形資産の評価を行う場面は稀かもしれませんが、今回、新しいガイドラインが公表されたことは覚えておくとよいでしょう。
(72ページの大作ですから、読みこなすのはキツイです)

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2016年5月23日 (月)

旬刊経理情報に『消費税「軽減税率」導入への対応ポイント』を寄稿しました

『旬刊 経理情報』 の最新号(2015年6月1日号)に、『消費税「軽減税率」導入への対応ポイント』を寄稿しました。

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今国会で成立した改正消費税法により、平成29年4月1日から消費税率を10%に改正するとともに、軽減税率の導入が予定されています。

この改正に伴い「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達」 、「消費税の軽減税率制度に関するQ&A (制度概要編) (個別事例編) 」が公表されましたので、これら通達とQ&Aの概要と、軽減税率導入によるシステム対応上の留意点についてまとめました。

その一方で、伊勢志摩サミット終了後の来週、消費税増税は延期される可能性が高いため、この記事の寿命(?)は1週間しかないかもしれません。
編集者から執筆依頼のあった時点で、既に増税延期は噂されていたため、延期の可能性も考慮しながら執筆するのに難儀しました。

記事の寿命が1週間とわかっていても、だれかが通達とQ&Aを解説しなければならないのです。
この桜の花にも似た潔よさ(?)をご理解いただければ幸いです。

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P.S 上記の目次にあるように、今号のもうひとつの特別企画として、太陽グラントソントン税理士法人の泉綾佳氏が「中国の値増税移行に伴う実務対応」を寄稿しています。このあたりの論点を手軽な分量でまとめていただけると実務家としては大変、助かります。
近年、中堅企業においても中国企業との取引は一般的なものになっていますので、こちらの記事もおすすめです。

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2016年5月 2日 (月)

新刊発売1カ月後の販売状況と増刷の御礼

3月末に刊行した新刊 『矢印を目でなぞるだけ! 一瞬でわかる決算書の読み方』 の発売開始から1ヶ月が経ちました。
発売1ヶ月間の販売状況を紀伊国屋全店のジャンル別ベストセラーで見てみますと、「経営」ジャンルの第10位につけています。

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順調な滑り出しでありますが、本書は「雑誌」扱いのため発売当初の露出は「書籍」よりもかなり有利です。その後、一気に露出が下がるためスタート時点でどれだけ売れるかが勝負になります。

ちなみに、「経営」ジャンルの売上ベスト1が中室牧子氏の大ヒット作 『「学力」の経済学』なのですが、これって「経営」ジャンルじゃなくて「経済」ジャンルじゃないんですか?
(これがなければ1桁台だったのに! しかし、この時期の会計監査小六法よりも売れていたのは誇るべきことかもしれません)

また、 「マンガでやさしくわかる決算書」 が、昨年1月の刊行から1年半で7刷となりました。

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読者の皆様には、この場をお借りして、あらためて御礼申し上げます。
この好調な売上状況を見ていると、今後もビジネス書のコミック化は益々加速するのでしょう。

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2016年4月12日 (火)

軽減税率制度に関する個別通達とQ&Aが出ました

本日、国税庁から「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/kansetsu/160412/160412.pdf

消費税の軽減税率制度に関するQ&A (制度概要編)
https://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/02.pdf

消費税の軽減税率制度に関するQ&A (個別事例編)
https://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/03.pdf

Q&A(制度概要編)が27ページ、(個別事例編)が41ページと宝島社の雑誌に負けないボリューム満点の付録付きです。

気になる論点としては、

個別通達11(持ち帰りのための飲食料品の譲渡か否かの判定)
「(一部略)標準税率の適用対象となるのか、又は持ち帰りのための容器に入れ、若しくは包装を施して行う飲食料品の譲渡に該当し軽減税率の適用対象となるのかは、当該飲食料品の提供等を行う時において、例えば、当該飲食料品について店内設備等を利用して飲食するのか又は持ち帰るのかを適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。」

(できるんでしょうか?)

個別通達21(困難な事情があるときの意義)
「(一部略)その困難の度合いを問わず、同項に規定する経過措置を適用することができることに留意する。」

(これは、潔くてすばらしい!)

この他にもQ&Aの事例では「水の販売」や「籾の販売」などディープなネタ満載の大作です。

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2016年4月11日 (月)

消費税の区分記載請求書は登録番号抜きの適格請求書になるのか?

平成28年度の消費税改正法が成立し、平成29年4月から区分記載請求書等保存方式、平成33年4月から適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)の導入が決定しました。

平成29年4月の税率改正延期は既成路線との報道もありますが、会計システムの担当者としては粛々と対応を進めるしかありません。

インボイス方式への移行期間に導入される区分記載請求書等保存方式の事例が財務省のパンフレットに掲載されています。

20160411pdf

しかし、現状の請求書(またはレシート)では、消費税額を区分して明記しているものがほとんどなので、この区分記載請求書等の様式例には違和感があります。

現状の請求書類に消費税額が区分記載されているのは、旧消費税法施行令第22項1項の積上げ計算の特例を適用するために;本体価格と消費税額を区分して明示することが求められているからです。

税制大綱によれば、この積上げ計算の特例は適格請求書方式導入時には廃止されるようですが、言いかえれば区分記載請求書等保存方式の期間は継続することになります。

そうなると、積上げ計算で申告するためには領収書、請求書に本体価格(または税込価格)と消費税額を区分して記載しなければいけないため、結局、登録番号抜きの適格請求書のような様式の請求書が作成されることになります。
(まさか、その前に積上げ計算の特例が廃止されるということなのでしょうか?)

条文上は「当分の間」の記載しかないので、納税者としては判断のしようがありません。



積上げ計算については平成16年の総額表示導入以来、このような曖昧な状況が続いており、システム担当者は迷惑を被っておりますので、地味な論点ではありますが積上げ計算の適用期間を政省令で明らかにすることを切に願います。

【追記】
平成28年3月31日に公布された財務省令第20号「消費税施行規則等の一部を改正する省令」、第12条において「平成29年適用日から平成33年3月31日までの間」と明記されていました(因縁つけて申し訳ありません)。

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2016年4月 1日 (金)

【書評】『決算早期化の実務マニュアル 第2版』

武田雄治先生から、新刊 『決算早期化の実務マニュアル 第2版』 (以降「第2版」)を献本いただきました。

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本書は、2009年の 『決算早期化の仕組みと実務』 をバージョンアップして2012年に刊行した 『決算早期化の実務マニュアル』 (以降「初版」)の改訂版にあたります。

したがいまして、今回の書評では第2版初版からどれだけ変わったのかに注目してみました。

何よりも変わったのは「まえがき」です。まえがきは本文と関係ないと思われる読者の方も多いと思いますが、作者の思いが吐露されるのが「まえがき」であり、「まえがき」を読めば作者の熱量がわかるのです。

第2版の「まえがき」に次のような記述があります。

「そして、筆者の決算早期化コンサルティングも、単に決算短針の発表日を前倒しするというプロジェクトの枠を超え、「真の経理部」の仕組みを構築し、経営に貢献できる経理部、企業価値の向上に貢献できる経理部を作るという内容に変わってきました。」

この一文が、第2版の特徴を表わしています。第2版では、単に決算早期化のノウハウを提供するだけではなく、経理部のあり方まで射程が広げられています。
初版では、経理部を「情報製造業」と定義していたのに対して、第2版では「情報製造業」の先の「サービス業」を目指すべきと主張しています。

単に数字を集計するだけではなく、 「各利害関係者に対する「サービス業」へと進化させなければならない」 (第2版p112)という方向性は、IFRS導入によって定性情報が増加しているという外的環境の変化ともフィットするものです。

各章の個別の手法についても、初版をベースにブラッシュアップが図られています。
その中で私が注目したのは、初版にはなかった「連結エクセル化」というアプローチです。これは、連結子会社数が少ないのならば連結専用ソフトを使うのではなく、積極的にエクセル化を勧めるものです。
子会社数やセグメントが増加した場合には連結専用ソフトを使わざるをえませんが、子会社数が少ない場合には、本書が指摘しているようにエクセルの方が効率的なケースは散見されます。
しかし、エクセルの使用を積極的に勧めるところまで踏み込んで記述するのは経験の裏付けがなければできない論点です。

本書を読んでいて、ひとつだけ気になった点があります。
150ページに資料データのファイル名を統一する手法が説明されています。
ファイル名を決算期、リファレンスナンバー、資料名といった属性ごとに決まった順序で命名することを勧めており、その例示の中でファイル名の属性の区切りに「半角スペース」が使われています。
ファイル名の検索やUnix環境でのファイルバックアップなどを考慮した場合、ファイル名に「スペース」は使わずに「_ (アンダーバー)」等を使用した方が良いでしょう(私のようなロートルSEの老婆心ではありますが)。

読者の皆さんが知りたいことは
「初版を持っているんだけど、第2版を買いなおす必要はあるのか?」
という論点かと推察します。
その結論は、
「当然、買っておきましょう」
ということです。

1冊2,500円なら、経理部員2時間分の残業代で回収できるんですから!

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2016年3月31日 (木)

IT委員会研究報告第48号、49号の公表

先日、日本公認会計士協会のIT委員会から

IT委員会研究報告第48号 「ITを利用した監査の展望 ~未来の監査へのアプローチ~」

IT委員会研究報告第49号「給与計算システムの受託業務に係る内部統制の保証報告書の記載例」 が公表されました。

いずれも、昨年末に公表された公開草案に対するコメントを反映させた最終版ですが、両報告とも大きな修正はありません。

この中でも研究報告第48号は、公開草案時に当ブログでご紹介したように、研究報告にモノローグ形式を取り入れるという革新的なアプローチがそのまま採用されており、 先日、ご紹介した「女騎士、経理になる。」に対抗できる斬新な研究報告になっています。

このまま行けば、マンガを取り入れた研究報告が公表される日も近いでしょう。

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2016年3月23日 (水)

どうして「一瞬」で決算書が読めるのかを作者自身が説明します 

本日3月23日に私の新刊 『一瞬でわかる決算書の読み方』 が発売されます。

この作品は出版20冊目の記念作でもありますが、さらに発売前の先週末時点で増刷が決定しました!
読者の皆様(今回の場合は発注していただいた書店の皆様)にあらためて御礼申し上げます。

201603230


私は、以前に 「12歳でもわかる!決算書の読み方」  
その後 「2時間で丸わかり 会計の基本を学ぶ」  
という書籍を出版しておりますので、

おいおい「12歳」とか「2時間」の次は「一瞬」かよ!

と鼻白む読者(および友人)の顔が思い浮かびます。
さらに、景品表示法 第4条の(不当な表示の禁止)への抵触を懸念される方もいらっしゃるでしょう。

そこで、本日は、なぜこの書籍は「一瞬」で決算書が読めてしまうのか、少々お時間をいただいて説明させていただきます。

【理由 その1】 判型が違う!

今回の作品は正確には「書籍」ではなくMOOKと呼ばれる「雑誌」の一種です。さらにMOOKの判型として主流のB5よりも大きいA4判で作られています。
この判型だから、B/S、P/L、C/Fの財務3表の図表を1枚のページで解説できるのです。
本書の後半では各業界のライバル2社の決算書を比較しているのですが、2社分の財務3表、つまり6枚の図表でも1ページに収められます。
これは、通常の単行本のA5判やB6判では実現できなかった手法です。

つまり、1ページで財務3表をまとめて比較できるから、一瞬で決算書が読めるのです!

【理由 その2】 決算書を図表化する優位性

今回、宝島社さんから執筆依頼をいただいた際に、私はてっきり「別冊 宝島」シリーズで、
「決算書で読み解くプロレス団体の隆盛」とか
「山口組分裂から学ぶ組織再編手法」
といった書籍企画かと興奮していたのですが、当然、そんなもののワケがなくビジネスマン向けの真面目なムックの執筆依頼でありました。

初めての打ち合わせで見せていただいた既刊誌の判型をみたときに、
「この大きさならば財務3表の図表を1ページに収められるなあ」
と気付いたのですが、そこに、大きな問題がありました。

今までの書籍でB/SとC/Fを図表化する手法は考案していたのですが、P/Lだけは図表化していなかったのです。

201603231

そこで、宝島の編集者の方に
「この週末にP/Lを図表化する手法を見つけられたら執筆します」
とお答えし、週末にあーだ、こーだ考えていたところ、窮鼠猫を噛むのたとえどおり、P/Lを図表化する方法が見つかりました!

その名も「P/L時計分析法」!

この時計分析法は本邦初公開の最新のメソドロジーであります!

ということで、執筆依頼をお受けして、無事に原稿もできあがったのですが初校を読んだ編集者から

「B/SとP/Lには分析法の名称があるのに、どうして、キャッシュフロー計算書には名前がないんですか?」  というツッコミが・・・・

そうなんです、キャッシュフロー計算書の図表化は、一般的なウォーターフォール(滝)チャートで済んでしまうため、特に名称を付けていませんでした。
そこで、再度、窮鼠猫を噛む状態で考えた結果、単なる図表化を新たな方法論へ昇華させました!
それが「C/F三段跳分析法」です!

遂に、財務3表に対するメソドロジーがそろったのです。
  「B/S似顔絵分析法」
  「P/L時計分析法」
  「C/F三段跳分析法」

つまり、B/S、P/L、C/Fを図表化するから一瞬で決算書が読めるのです!

【理由 その3】 部分ではなく全体を把握できる 

前作、「12歳でもわかる」も単にインパクトだけでタイトルをつけたわけではなく、その裏付けとして貸借対照表を似顔絵に置き換えるB/S似顔絵分析法という方法論があってのことです。

今までB/S似顔絵分析法について自虐的に「バカバカしい手法」と表現することがありました。しかし、今回の作品の製作過程で気付いたことは、この似顔絵分析法は幼稚な手法に見えますが、ハードカバーの財務分析の専門書で紹介されている個々の財務指標を読み解く手法よりも圧倒的に優れている という点です。

B/Sの静態的分析においては、流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産の相対的な関係を把握することが肝要であり、それを 2数間の関係しか表わせない財務指標で理解するのは無理なのです。

具体的な事例を挙げてみましょう。
・有名な財務指標に流動比率があります、これは短期的な支払い義務(流動負債)と支払原資(流動資産)の関係を表わすもので、100%以上が望ましく、数値が大きいほど安全性は高まります。
ちなみに、小宮一慶氏は、ベストセラーの『「1秒!」で財務諸表を読む方法』のなかで、「1秒」で財務諸表を判断するならば、まず流動比率をみるべきとおっしゃっています。

流動比率=流動資産÷流動負債

一方、固定長期適合率という財務指標があります。これは、固定資産分の資金を長期的債務である固定負債と自己資本でまかなえているか否かを判断する指標で100%以下が望ましく、数値が小さいほど理想的です。

固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+自己資本)

簡単な事例を見てみます。
次のA社とB社は、どちらの方が安全性が高いでしょうか?

201603232

流動比率は数値が大きいほど安全なので流動比率でみればA社が優れています。
固定長期適合率は数値が小さいほど安全なので固定長期適合率でもA社が優れています。
両指標ともA社が勝っているのですから、A社の安全性が高いのでしょうか。

次に両者のB/S似顔絵を作ってみましょう。

201603233

この似顔絵を見ればわかるように、自己資本の占める割合の大きさ、負債の少なさといった視点から総合的にはB社の方が安全性が高いことがわかります。

また、数字に強い人ならば、流動比率が100%以上(望ましい状態)ならば、固定長期適合率も必ず100%以下(望ましい状態)になることは中学校の数学で証明できますし、感覚的に両数値が補完的な関係にあることを見抜けたかもしれません。

しかし、この似顔絵を見れば、流動比率も長期固定適合率も左目と右眉の関係を表わしているに過ぎず、顔の上側の割合を流動比率、顔の下側の割合を長期固定適合率と呼んでいることが誰でも理解できます。

このように、B/Sの安全性分析に用いる指標は互いに関連性があるのですが、似顔絵分析法を使えば、全体的な関係が一目でわかるのです。

もしも、小宮一慶氏がおっしゃるように「1秒」で流動比率が計算できるのなら、左目と右眉の位置関係をつかむのは、まさに「一瞬」で可能なはずです。

つまり、部分ではなく全体をイメージできるから、一瞬で決算書が読めるのです!

【理由 その4】 決算書を読む手順が組み込まれている 

私が、ここで 「方法論(メソドロジー)」 という単語を使っている理由は、本書における分析法は作図過程で決算書を読む手順も示している点で、単なる図表化と異なるためです。

決算書の読み方には順序があります。各分析法は図表化にあわせて、その順序が自然にわかるように設計されています。

B/S似顔絵分析ならば、 右目⇒左目⇒右眉⇒左眉
P/L時計分析では  短針⇒長針⇒秒針
C/F三段跳分析では HOP⇒STEP⇒JUMP

この順序は 、抽象化の対象物である似顔絵や時計を日常的に利用するときの順序と合致させているため初心者でも忘れることがありません。

B/Sを百分比で表わす手法自体は、従来から様々な書籍で用いられています(私が認識している範囲では、山根節氏の「ビジネスアカウンティング」が初出かと思います)。
しかし、B/S似顔絵分析法では、作図過程においてB/Sを読む順序が組み込まれているため、主要な論点を見落とすことがありません
「ここを見ろ」「ここが重要」といった論点を列挙する手法とは次元の異なるアプローチであることを理解いただければと思います。

(書いてから気付きましたが、最後の理由は、「わかりやすさ」の理由にはなっても、「一瞬」で読める理由にはなっていませんでした。)

かなり長い前口上(ポジション・トーク)になってしまいましたが、発売初日ということでご容赦ください。
後は、皆さんに書店で実物を確認していただくだけです!

【ご注意】
今回の書籍は雑誌扱いのため書籍の会計コーナーには置いてありません。
ビジネス関係の雑誌コーナーをお探しください。

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2016年3月11日 (金)

収益認識基準の日本導入は平成30年1月1日からを予定 

まず最初に、本日、3月11日で東日本大震災から5年を迎えるにあたり、犠牲になられた方々にあらためて哀悼の意を表します。

昨日、3月10日付で企業会計基準委員会から 『現在開発中の会計基準に関する今後の計画』 が公表されました。 https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/plan/index.shtml

この中で、 「顧客との契約から生じる収益」 (IFRS 15号) に対応した、収益認識に関する日本基準の開発について言及されており、現在の計画では平成30年1月1日以後開始する事業年度に適用可能にすることが目標になっています。

「また、基準開発に向けた検討にあたっては、IFRS 第 15 号及び Topic 606 の強制適用日を踏まえ、平成 30 年 1 月 1 日以後開始する事業年度に適用が可能となるように会計基準の開発を進めることを当面の目標としている。」

この収益認識基準導入による販売管理システムの修正は、かなり広範囲に及ぶことが予想されるため、今後の開発過程を注視しましょう。

一方、平成33年4月からはじまる消費税のインボイス方式導入によっても販売管理システムの修正が必要になります。

私は、以前から消費税改正と収益認識基準の導入時期が重なってしまうことを恐れていたのですが、インボイス方式導入にあたって4年間の猶予措置(区分記載請求書保存方式の適用)がとられた結果、収益認識基準への対応後にインボイス対応をすることになりそうです。

ただし、本家のIFRS15号適用も、当初予定からズルズル遅れて2018(平成30)年1月からになっていますし、任意適用開始と強制適用開始には数年の猶予期間が設けられるでしょうから、結果としてシステム対応のタイミングは重なってしまうかもしれません。(恐怖だ・・・・)


20160311

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2016年3月10日 (木)

書評『女騎士、経理になる。』 

先日、らくからちゃ氏のブログ 「ゆとりずむ」Rootport 氏 の著作 『女騎士、経理になる。』が紹介されネット上の話題になりました。
そこで、今回は、本書『女騎士、経理になる。』を取り上げてみましょう。

20160310_2


(Disclaimer)
評者である私自身も同類の会計コミックを上梓しているため、書評の中立性に問題が生じる恐れがあります。

本書は、Rootport氏のツィートを原作としてコミック化したもので、 『ファンタジー』『会計』 の融合という革新的なアプローチがとられています。

私のような中年オヤジにとっては、『ファンタジー』系のストーリーや絵柄がちょっと厳しいのですが(お恥ずかしい話ですが、文中に出てくる「オーク」や「エルフ」といった単語が固有名詞なのか一般名詞なのかがわかりません)、話のところどころに挿入された会計ネタの面白さは、ツウをうならせるものです。

『ファンタジー』と『会計』の融合という点でも破たんなくまとめられており、その切れ味はかつての名番組『カノッサの屈辱』を思い起こさせます(このネタがわかること自体、相応の年齢)。

私も、かつてビジネスコミックを製作したことがあるのですが、その経験から、本書の中で一番共感したのはあとがきに書かれている作画担当の三ツ矢彰氏への謝辞です

「最後に、最大の賛辞を作画担当の三ツ矢彰先生に送りたい。私の乏しい語彙では、この気持ちを伝えるのに十分な言葉がみつからない。」

本当に、マンガ家の方々の才能というか能力はすごいものがあります。
その製作過程を拝見すると「最初のこれが、最後には、こんな形になるのか!」と感心しきりです。
今回の作品もRootport氏の原作の面白さだけでなく、それをコミックとしてまとめあげた作画担当の三ツ矢彰氏(または途中に協力されたシナリオライターの方も含め)の尽力の賜でしょう。

ストーリーで会計を教えるというアプローチは、既に山田真哉氏の「女子大生会計士の事件簿」シリーズや林總氏の「餃子屋とフレンチ」シリーズが偉大な実績を残しておりますが、「ファンタジー」と「会計」を融合したRootport氏の革新性に、我々(勝手に一緒にするな!)会計士は立ち向かうことができるのでしょうか?

そこで(?)私も「革新性」という点においては会計史上に残るであろう新作を用意いたしました。

『矢印を目でなぞるだけ! 一瞬でわかる決算書の読み方』
(まだ、書影も作者名も入ってませんが、私の作品です)

おいおい「12歳」とか「2時間」でわかるの次は「一瞬」かよ!

「目でなぞる」んじゃなくて「目で追う」だろう!

と鼻白む読者の皆様の顔が思い浮かびますが、次回作はかけねなしに「一瞬」で決算書が読めてしまいます。
そのために、 「B/S似顔絵分析法」 に続く新しい方法論を開発しました。
Photo

その秘密の封印が解かれるのは3月23日です!
こうご期待ください!

(ということで、今回は書評から無理やり、自作のティーザー広告に持ち込んでしまいましたが、刊行2週間前ということでご勘弁)

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2016年3月 9日 (水)

書評『管理会計の理論と実務(第2版)』

中央経済社から日本大学商学部教授 川野克典氏の新刊 『管理会計の理論と実務(第2版)』 を献本いただきました。 本日は、この骨太の1冊をレビューしたいと思います。

201603091


(Disclaimer)
作者である川野氏は、私のコンサルティングファーム時代の上司でありまして、下手な書評は書けないという緊張感(?)が生じております。

本書は2012年に刊行された同名書籍の改訂版です。 前書きにあるように「理論と実務の橋渡し」となることを目的とし、管理会計の理論を説明するだけではなく、実務における適用事例や課題をまとめています。

たとえば、次のような文中の簡単な一言も、実経験の裏付けがなければ書けないものであり、読者にとって参考になります。

「(原価計算の)差異分析の中でも、製造間接費の分析は、二分法、三分法、四分法が存在するが、そのいずれの分析も無意味と考えている実務家は多い」 (45ページ)

「ABCは、誕生初期においてすべての間接費を割り付けできると誤解された。筆者もコンサルタントの時、顧客にABCによりすべての間接費を割り付けできると説明していた時期がある」(104ページ 注書)


また、作者は管理会計の理論上のベースとなる原価計算基準の現状との乖離について強い問題意識を有しており、第5章「原価計算基準の陳腐化」、第18章「会計基準に対応した日本企業の管理会計の変革」において原価計算基準の改訂を提言しています。

そこで、今回、比較対象としてとりあげるのは清水孝氏の『現場で使える原価計算』 (以降「比較書」)です。


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比較書の特徴は、2011年に上場製造業に対して行った質問票調査の結果にもとづき、原価計算実務の現状を伝える点にあります。

たとえば、地味ではあるが現場担当者を悩ませる論点として材料副費の処理があります。

それに対して以下のような調査結果が提示されるため、自社の処理方針を決める際の参考になります。

材料の購入原価に含める材料副費の範囲(複数回答あり)
①すべての外部副費  93社
②一部の外部副費   57社
③すべての内部副費  17社
④一部の内部副費   31社
⑤材料副費は材料の購入原価に算入していない 42社
 無回答 4社
(比較書 28ページ 図表2‐6より抜粋)


原価計算書籍の多くは、理論の説明を中心にしたものが多いため、実務の状況を俯瞰できる書籍は貴重です。

今回、比較書をあらためて読み直したところ、以下のような記述があることに気付きました。

「川野(2008)は、『基準』が答申された時代と比較し、手作業から機械中心の生産方式への変化、対象生産から多品種少量生産への変化、研究開発費等の間接費の増加、ITの進展、生産・販売・研究開発等の分野における日本企業のグローバル展開、非製造業やソフトウェア業の拡大などを示した上で、『基準』はこれら応えられず、『基準』にとらわれない原価計算をする必要があると指摘している」 (比較書 16ページより引用)

作者の清水氏は、川野氏の問題提起に対する回答を提示することが調査のきっかけになったと書いています。

評者である私自身は、アカデミックからほど遠く実務一辺倒で働いているため、学術上の理論を軽んじがちなのですが、アカデミック領域の方々の地道な努力が実務のバックボーンになっていることに改めて気付かされました。

今回の2冊は、合わせて読むことで、自社の原価計算の在り方について見直すきっかけが得られるでしょう。

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2016年3月 3日 (木)

「会計の基本」10刷りの御礼と書評「JTのM&A」

昨日のブログでは、芳林堂の自主廃業、ジュンク堂 千日前店の閉店と出版業界の景気の悪い話を紹介してしまいましたが、今日は景気のいい話です。

このたび、拙書 『この一冊ですべてわかる 会計の基本』 が、刊行から5年半で10刷り となりました!

201603031


これも、一重に読者並びに営業部門を中心とした日本実業出版の皆様のご協力のおかげです。この場をお借りして御礼申し上げます。

本書は会計の基本書でありますが、増刷のたびに最新の会計制度にあわせて改訂を行っています。
「この一冊ですべてわかる」という副題の通り財務会計から税務まで広範囲を対象としているため改訂にも手間がかかるのですが、その中で最も面倒なのが章末ごとに記載したブックガイドの見直しです。

刊行当時に掲載した推薦図書から、この5年間で半分以上の書籍が入れ替えられています。これは、掲載から外した書籍の質の問題ではなく入手困難になる書籍が多いためです。
近年の出版環境では書籍の寿命は年々短くなっており、そもそも、出版社自体が倒産してしまうケースも増えています。その結果、代わりの書籍を探してこなければならないのです。

一方、新刊でお薦めの書籍についても順次追加しており、今回の改訂時に追加したのが新貝康司氏の 『JTのM&A』 です。
ということで、ここからは簡単ですが『JTのM&A』をご紹介していきましょう。

201603032


本書は、JT代表取締役副社長の新貝康司氏が、RJRインターナショナル、ギャラハーといった海外たばこ事業買収の経験をまとめたものです。
題名は「M&A」になっていますが、本書で一番、参考になるのはJTにおける「ガバナンス」の考え方です。

実務において、「ガバナンス」のレベルをどう設定するかは、大変、難しい問題です。
上場企業の場合、「ガバナンス」の最低レベルが内部統制監査をクリアするところにあるのは明解ですが、そこを超えて「ガバナンス」の上限を語りだすと突然、神学的な理想論まで飛躍しがちです。
本書におけるJTのガバナンスの考え方は、そのような極論に対して現実的なレベルを示す基準となるでしょう。

企業買収の一連の流れを学ぶためにも有益ですし、日々、内部統制業務に携わっている方々にとっては仕事のモチベーションを上げる一冊としてもお薦めです。
拙書では「第12章 組織再編」の推薦図書に加えましたが、むしろ「第5章 内部統制」の方が適切だったかもしれません。

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2016年3月 2日 (水)

ジュンク堂 千日前店 閉店  これは地獄の一丁目か?

先日、大型書店チェーンの芳林堂の自己破産が報道されました。

早稲田大学の学生ならば、学生時代に読んだ多くの本を芳林堂高田馬場店で買われた方も多いでしょう。
特に高田馬場店はシステム系の技術書が豊富だったため、私は、大学卒業後も、よく足を運びました。

芳林道の破産から3日後の昨日、ジュンク堂の千日前店が3月21日に閉店するとのニュースが飛び込んできました。
https://www.junkudo.co.jp/mj/news/detail.php?news_id=110

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千日前のジュンク堂は、難波の吉本新喜劇の前にある超大型店です。東京ならば、紀伊国屋の新宿本店と同規模、同立地の書店と考えていただければいいでしょう。
従来から、出版業界の厳しさは様々なところで語られていますが、このジュンク堂 千日前点の閉鎖は、その中でもインパクトのある事件です。

2000年に2万店を超えていた書店数は、現在では1万3千店まで減少しています。
http://www.1book.co.jp/001166.html

主な減少理由は、郊外の中小規模店舗の廃業と言われていましたが、出版不況は都心の大型店にも及んでいることが明らかになりました。

このジュンク堂 千日前店は、以前、私の書籍が全店週間売上のトップになった思い出の書店なのですが、今、振り返れば、私ごときのビジネス書がトップになってしまう程度の売上だったということで、益々、気が滅入ります。

しかし、あの店舗が空いてしまうとNMB48劇場が全館使用することになるんでしょうか?(たこ焼きの「わなか」かもしれない)

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IT委員会研究報告第47号 「業務処理統制に関する評価手続」の公表

本日、3月1日付で日本公認会計士協会(IT委員会)から、IT委員会研究報告第47号 「業務処置統制に関する評価手続」が公表されました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/20160301z5u.html

昨年の11月11日付で公表された公開草案から大きな変更はありません。

当研究報告は、平成26年9月30日付で公表されたIT委員会研究報告第46号「重要な虚偽表示リスクと全般統制の評価」と合わせて利用することが予定されています。

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2016年2月17日 (水)

日経コンピュータに取材協力しました

現在発売中の日経コンピュータ 2016年2月18日号の新収益認識基準の記事に取材協力しました。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/NC/

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社内で購読されている会社も多いと思いますので、お手許にございましたら御一読いただければ幸いです。

P.S
私の記事とは関係ありませんが、今週号の「動かないコンピュータ」で紹介されていた日新電機の事例『システムの不具合で10億円過大計上 過去5期分の決算書を訂正』は、会計システムの恐さを実感する話で参考になりました。

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2016年1月 6日 (水)

新年のご挨拶とお詫び

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

と新年のご挨拶に引き続き、お詫びがございます。

昨年末、 『旬刊 経理情報』 2015年12月20日号に寄稿した『消費税「リバースチャージ方式」への対応上の留意点』 の記事中に誤りがありました。

20151211


消費者向けの電気通信利用役務の提供は、登録国外事業者分のみ仕入税額控除の対象になるのですが、その対象になるのは登録国外事業者として登録された以降の取引に限定されます。
その点について次のように記述しました。

(注)登録国外事業者の取引が仕入税額控除の対象になるのは、国税庁長官の登録を受けた以降の取引である。したがって、登録以前における取引については仕入税額控除の対象にならない点に留意する(改正法附則38①)

お読みいただければわかるように、登録された以降の取引が対象になるのですから対象にならないのは「登録以前」ではなく「登録」の取引です。

読者の方からの指摘で気付きまして、旬刊経理情報の2016年1月10/20合併号で訂正記事を掲載していただくことになりました。
ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

ご指摘いただいてから、間違えた原因を確認してみると、なかなかややこしい論点にぶつかりました。

この注記は国税庁が公表している「国境を越えた役務の提供に係 る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」 問33 (登録日以前の「消費者向け電気通信利用役務の提供」の仕入税額控除)を参考にして記載したものだったのですが、この問33には次のように書かれています。

問33 インターネットで確認したところ、相手事業者が登録国外事業者であることを確認できました。登録年月日以前にも同じ国外事業者から役務の提供を受けていますが、遡って仕入税額控除は可能ですか。

【答】
仕入税額控除を行うことはできません。

登録日の取引は仕入税額控除の対象になりますから、厳格にとらえるならば「登録年月日以前」の取引について聞かれた問いに対して、そのすべてを対象外と答えるのは誤りになります。

法律用語では、基準点を含むか否かで「以前」「前」「以後」「後」というように厳格に使い分けられていますが、「前」「後」といった表現を通常の文章に使うと不自然に感じる場合があります。
例えば、「今日」より前のことを「今日前」と表現するのは不自然なため、通常は「今日以前」と表現し、その際には基準点が含まれるか含まれないかは特段の論点になりません。
基準点を含まない大小を表わす単語として「未満」という言葉がありますが、この単語は量の大小を表わすものであり、日本語には時間の経過を表わす同義の単語がないことも原因と思われます。

このQ&Aは一般の方を対象としているため、ここで用いられている「以前」も、日常用語として使われていると考えられます。
(実際、当該Q&Aの問いの後半では、正確な表現で対象取引を規定しています)

それに対して、当方の原稿は会計の専門家を対象としたものですから、法律用語に準じて正確に表現すべきであり、Q&Aにおける「以前」という単語をそのまま使うのではなく、「前」に置き替えるべきでした。

あらためて、読者の方々に、お詫び申し上げます。

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2015年12月11日 (金)

旬刊経理情報に『消費税「リバースチャージ方式」への対応上の留意点』を寄稿しました

『旬刊 経理情報』   の最新号(2015年12月20日号)に、『消費税「リバースチャージ方式」への対応上の留意点』を寄稿しました。

http://www.keirijouhou.jp/1433/index.html

20151211


平成27年10月1日以後の取引から適用が開始された、消費税の「リバースチャージ方式」に対応する際の留意点について、経費管理システムの仕組みとともに解説しています。

経理部門で定期購読されている会社も多いと思います。お手許にございましたらご一読いただければ幸いです。

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2015年12月 9日 (水)

「ITを利用した監査の展望 ~未来の監査へのアプローチ~」(公開草案)の公表

本日、12月9日付けで日本公認会計士協会のIT委員会からIT委員会研究報告 「ITを利用した監査の展望 ~未来の監査へのアプローチ~」の公開草案が公表されました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1838.html

「未来の監査へのアプローチ」と、まるでSF映画のようなタイトルがついていますが、実際に最後の章では未来の監査の姿をモノローグ形式で記述するというSF小説のような作りになっています!

本研究報告では、未来の監査の概念を、次のように定義しています。

「ITが全面的に利用されている企業環境において、ITを活用することにより、被監査会社の重要なデータについては全データをリアルタイムで検討し、統計学的なアプローチによりビッグデータ的な分析手法も含めて、精査的・統計的手法により比重を置いて監査意見を形成する監査の体系」

被監査会社のデータを継続的に監視し続けるCA(Continuous Auditing)の仕組みや、KPMGがF1のマクラーレンチームと組んで新しい監査手法に取り組んでいる話とか刺激的な話が盛り込まれた今までにない革新的な研究報告と言えましょう。

なお、公開草案への意見提出期日は2016年1月12日までです。

これからは、CAと言ったらCabin Attendantではなくて、Continue Auditingの時代ですよ!

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2015年12月 8日 (火)

書評『ITエンジニアとして生き残るための会計の知識』とSE本の興亡

公認会計士の原 幹先生 から、新刊の 『ITエンジニアとして生き残るための会計の知識』 (日経BP社)を献本いただきました。

先日、書評を掲載した『「クラウド会計」が経理を変える!』 が9月の発売ですから、立て続けの刊行になります。

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(Disclaimer)
評者である私自身も同類の会計書籍を上梓しているため、書評の中立性に問題が生じる恐れがあります。
ということで、今回は、少し書評を離れSE向けの会計本の歴史を紐解いていきましょう。


SE(システムエンジニア)は1980年ごろ、電子計算機の普及にあわせて広がった職種です。
SE向けの書籍の中心は開発言語を解説した技術書だったのですが、徐々にビジネス書に近い領域の書籍が増え始めました。

その萌芽となったのが、ワインバーグの一連の書籍です。



その後、情報システムの発展にともなって従事者も増加し、SE向けの書籍がビジネス書の中でも一定の需要を生み、「SE本」と呼ばれるジャンルが生まれてきました。

私が、SE本における会計書籍のターニングポイントと考えるのは、 2001年に小橋淳一氏が著した 「経理・財務知識の再入門講座」 のヒットです。



私が本書を手にとったのは、システム開発の現場を離れ既に公認会計士になってからですが、自分が新人SEのころにこのような本があれば良かったのになあと思わせる内容でした。

本書が、それまでの会計書籍と違ったのは、単に会計知識を伝えるのではなく業務のプロセス、つまり業務知識として伝えている点です。

この書籍の成功後、SE向けに様々な業務知識を解説した書籍が増え、SE本のジャンルが広がっていきます。

書籍だけではなく、このころはSE向けの雑誌も隆盛であり、雑誌の連載を書籍化したものも多く生まれました。
DB Magazineに連載を続けていた梅田弘之氏の一連の著作は、現在でも参考になります。

この2000年代の前半が、SE本のピークと思われます。
その勢いに便乗して、私も2006年に 『超図解 新人SEのための会計&業務の基礎知識』 を刊行しました。

しかし、この本は現在では入手できません。
それは、絶版になったからではなく、発売直後の2007年に出版元のエクスメディア社が倒産してしまったからです。
エクスメディア社はパソコンユーザー向けの超図解シリーズで躍進した出版社でしたが、Windows95から始まったパソコンブームも次第に沈静化していき、新たな需要を築けませんでした。
(なお、エクスメディア社は出版社にもかかわらず、社内にデザイン室があるなど編集手法が独特で、著者としては大変、勉強になりました。)

パソコンがコモデティ化して行くのと並行して、エンタープライズ向けのシステム構築も従来の受託開発からSAP等のERPを用いたパッケージ開発に移行していきます。
この地殻変動にともなってSEを冠した書籍は徐々に減少し、最近ではITエンジニアやITコンサルタントといった名称に置換えられていきました。

2000年代には
COMPUTER WORLD(IDGジャパン)
IT アーキテクト (IDGジャパン)
月刊 コンピュートピア (コンピュータエージ社)
Software People (技術評論社)

といった開発者向けの書籍が多くありましたが、現在は既に廃刊しています。日経BP社の発行していた「IT プロッフェショナル」誌が「日経システム構築」誌と統合して「日経SYSTEMS」に生まれ変わるなど、銀行業界同様の再編もありました。

現在では、かつてのSE本ジャンルの会計書の出版は減少しており、私の手許にあるものとしては、

2012年に吉田延史氏が刊行された「 ITエンジニアのための会計知識41のきほん」(インプレスジャパン) が最新の作品になっています。
(なお、本書では、最後のコラム 「ステップアップのための書籍紹介 」で拙書 「会計の基本」 を推薦していただいています。この場をお借りして御礼申し上げます)


無駄に長い前フリから、評書の解説に戻ります。

評書も、これまでのSE向け会計本と同様に、最初に会計の基本的知識を、次に会計業務のプロセス会計システムの機能と関連付けながら解説していきます。
本書の特色は後半にあります。

第5章では、 「顧客向けITプロジェクト」 参画時に必要な知識として ・原価計算 ・売上の計上、工事進行基準 ・プロジェクト別損益 を解説。

第6章では、 個々のプロジェクトからさらに一歩進み、 「事業計画」 作成に必要な知識として 事業計画の作成手順 ・KPIとなる財務指標を紹介。

最後の第7章 では「社内IT投資」に必要な会計知識として投資の効果測定にまで言及しています。

本書は、SE本の系譜を継ぐ書籍として十分な内容を持つだけではなく、現代のITエンジニア、ITコンサルタントの業務領域までを抑えた書籍と言えるでしょう。

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2015年11月25日 (水)

書評『「クラウド会計」が経理を変える!』の掲載

今週刊行された 『旬刊 経理情報』 12月1日号の書評欄において、 原 幹先生 が執筆された 『「クラウド会計」が経理を変える!』



の書評を寄稿しました。


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(原先生は現在、同誌で「IFRSシステム整備の勘所」という連載も執筆されています)

経理関係の専門書ではありますが、部門で購入されている会社も多いと思いますので、お手許にございましたら御一読いただければ幸いです。

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2015年11月13日 (金)

書評、増刷、その他の御礼

『月刊 税理』10月号の書評欄において拙書 『2時間で丸わかり 会計の基本を学ぶ』 の書評を掲載していただきました。

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ご注意いただきたいのですが、既に書店には11月号が並んでいます。
実は、掲載誌を出版社から送っていただいたのですが、事務所でも「月刊 税理」を定期購読していたため、書評の掲載に気づくのが遅れてしまいました(ぎょうせい編集部の皆様、大変、失礼しました)。

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また、先日は、らくからちゃ氏のブログ「ゆとりずむ」でも、拙書をご紹介いただきました。

「簿記の基礎と基本について10分ぐらいでわかるようにまとめてみる」

このブログは、個人の方が運営されているのですが、内容の充実度が凄まじく、先日のエントリーは1500(!)はてブを超えております。

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しかし、ここまで充実した内容の記事が無料で読めるならば、あえて私の本を買われる方はいないのでは?(職業作家としては商売、上がったりです)

藤沢数希氏の 「金融日記」 でも、

「個人事業と小さな会社の経理と節税はこの4冊だけで大丈夫」

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の4冊の1冊として、拙書を取り上げていただきました。

藤沢氏は、クラウド会計システムを用いた小規模事業者の経理の自動化を推薦しています。
拙書の第4章では 「簿記がわからなくても経理はできるの?」 と題して、会計ソフトを利用した簡便な経理方法について解説しているので、その部分も評価していただけたのでしょう。

さらに、すらたろう氏の「すらすら日記」

「どうやって「会計の基本」を教える/教わる?」

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でも、拙書を推薦いただきました。
実務においては自分が学ぶ以上に、他のスタッフに教えることの方が難しいものです。拙書がその参考になれば幸いです。

最後に、前々作の 『まんがでやさしくわかる 決算書』 もご好評いただき、このたび5度目 6度目(【訂正】今回が6刷りなので、増刷回数としては5回が正しいです)の増刷 となりました。
重ねて御礼申し上げます。

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